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第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる
07-1.三竹山の鬼は愛に溺れる
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* * *
(居心地の悪い山だ)
春博は眉を顰める。
旭に付き従うようになり、狐塚町に暮らすようになった年月は短くはない。年月がどれほど流れようとも三竹山が苦手だった。
旭たちの気配を察したのか。
時々、小鬼が木の上から旭たちを見ている。
見ているだけで攻撃の一つさえもしようとしない。
縄張りである山から追い出そうとすらもしない。
しかし、歓迎をしているわけではない。
「ずいぶんと古いお寺ですね」
香織は三竹山に寺があるのを知らなかったと言いたげな顔をしていた。
それに対し、旭は尾を揺らすだけで応えない。
(旭様。僕に世間知らずの小娘の世話をさせようとしていませんか……?)
心の中で旭に問いかける。
春博は好ましい感情を抱いていない香織に視線を向ける。
その視線にさえも香織は気づいていなかった。
「この寺の奥に祠がある」
春博は素っ気なく返事をした。
それが、香織が何も考えずに口にしていた言葉に対する返事だと気づいたのだろう。香織は何度も瞬きをしながら、恐る恐る、春博に視線を向けた。
「頭領殿は寺にいるのだろう。わざわざ、自分の力を封じた祠の近くに留まる気が知れないな」
「それは、ど、どうして、ですか?」
「僕が知るわけがないだろう」
春博は視線を寺に向ける。
狐塚街を一望する事が出来る崖に建てられているその寺には、寺を守るべき人の姿は見当たらない。
「廃寺を住処とするのはよくある話だ」
あやかしにとって、忘れされた場所は都合のいい隠れ場所になる。
それを知っているからこそ、春博は険しい表情を浮かべていた。
(居心地の悪い山だ)
春博は眉を顰める。
旭に付き従うようになり、狐塚町に暮らすようになった年月は短くはない。年月がどれほど流れようとも三竹山が苦手だった。
旭たちの気配を察したのか。
時々、小鬼が木の上から旭たちを見ている。
見ているだけで攻撃の一つさえもしようとしない。
縄張りである山から追い出そうとすらもしない。
しかし、歓迎をしているわけではない。
「ずいぶんと古いお寺ですね」
香織は三竹山に寺があるのを知らなかったと言いたげな顔をしていた。
それに対し、旭は尾を揺らすだけで応えない。
(旭様。僕に世間知らずの小娘の世話をさせようとしていませんか……?)
心の中で旭に問いかける。
春博は好ましい感情を抱いていない香織に視線を向ける。
その視線にさえも香織は気づいていなかった。
「この寺の奥に祠がある」
春博は素っ気なく返事をした。
それが、香織が何も考えずに口にしていた言葉に対する返事だと気づいたのだろう。香織は何度も瞬きをしながら、恐る恐る、春博に視線を向けた。
「頭領殿は寺にいるのだろう。わざわざ、自分の力を封じた祠の近くに留まる気が知れないな」
「それは、ど、どうして、ですか?」
「僕が知るわけがないだろう」
春博は視線を寺に向ける。
狐塚街を一望する事が出来る崖に建てられているその寺には、寺を守るべき人の姿は見当たらない。
「廃寺を住処とするのはよくある話だ」
あやかしにとって、忘れされた場所は都合のいい隠れ場所になる。
それを知っているからこそ、春博は険しい表情を浮かべていた。
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