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第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる
06-3.
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旭だけならば、鬼たちを相手にしても無傷で済むだろう。
しかし、春博と香織はそういうわけにはいかない。
「……三竹山に住んでいる鬼の仕業では、ないのですか?」
香織は怯えながらも、考え抜いた答えを口にする。
それに対し、旭は頭を左右に振った。
「鬼はなにもしていない」
「あやかしの仕業ではないのならば、わたしは、なにもできないです」
「落胆するのではないよ。香織。お前にはお前にしかできないことをしてもらうのだ。巫女の仕事はあやかしを祓うことだけではないということを、よく、覚えておくといい」
人魂が溢れていても放置していた。
人間が紛れて混んでいても放置していた。
鬼にとっては貴重な栄養源であることを理解しながらも、手を出すこともなく、その行方を案ずることもなく、ただ、見て見ぬふりをしていた。
「なにもしていないのですか?」
春博は信じられないと言いたげな声をあげた。
「旭様。それは職務放棄と同等の意味を持つはずです」
「そうだな」
「それならば考えるまでもありません」
狐塚町に住むあやかしたちは、住処を与えられる代わりに人の害になるような災いを遠ざける役目を担っている。
それは住処を奪わない代わりに交わした約束だ。
約束を破れば、相応の罰を下す。
しかし、約束を守っている限りは旭に守られることになる。
争いを好まないあやかしたちは、その条件を受け入れて狐塚町に住みついている。
「すぐにでも罰を下しましょう。旭様との約束を破るような鬼は旭様に相応しくありません」
その事情を知っている春博だからこそ、三竹山を居住地とする鬼たちの対応を受け入れられるものではなかった。
「話をつけると言っているだろう」
旭は、尾で春博の頭を軽く叩く。
しかし、春博と香織はそういうわけにはいかない。
「……三竹山に住んでいる鬼の仕業では、ないのですか?」
香織は怯えながらも、考え抜いた答えを口にする。
それに対し、旭は頭を左右に振った。
「鬼はなにもしていない」
「あやかしの仕業ではないのならば、わたしは、なにもできないです」
「落胆するのではないよ。香織。お前にはお前にしかできないことをしてもらうのだ。巫女の仕事はあやかしを祓うことだけではないということを、よく、覚えておくといい」
人魂が溢れていても放置していた。
人間が紛れて混んでいても放置していた。
鬼にとっては貴重な栄養源であることを理解しながらも、手を出すこともなく、その行方を案ずることもなく、ただ、見て見ぬふりをしていた。
「なにもしていないのですか?」
春博は信じられないと言いたげな声をあげた。
「旭様。それは職務放棄と同等の意味を持つはずです」
「そうだな」
「それならば考えるまでもありません」
狐塚町に住むあやかしたちは、住処を与えられる代わりに人の害になるような災いを遠ざける役目を担っている。
それは住処を奪わない代わりに交わした約束だ。
約束を破れば、相応の罰を下す。
しかし、約束を守っている限りは旭に守られることになる。
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「すぐにでも罰を下しましょう。旭様との約束を破るような鬼は旭様に相応しくありません」
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「話をつけると言っているだろう」
旭は、尾で春博の頭を軽く叩く。
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