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第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる

05-5.

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(これが、わたしにもできるようになるとは思えないよ)

 旭の羽織を身に付けながらも、大した変化は現れなかった霊視の才により苦しめられた日々を思い出す。

 助けを求める声を聞きながらもなにも出来ずに、見て見ぬふりをするしかなかった。

 父親に助けを求めても、自然の摂理に逆らうことは出来ないのだから諦めるように神主らしからぬ答えしかなかった。

 しかし、舞を見た後ならば、その答えの真意を理解することが出来た。

 無念を抱きながらも死した人々を慰める舞はある。

 それは、死した人が現世や狭間に戻り彷徨い続けないようにする為の祈りを神に捧げる舞である。
本質は同じではあるものの、行為そのものは異なる。

「面白いことを言う。神様の舞ではないよ」

「旭様の舞は、神様の舞ではないのですか?」

「違うとも。俺はあやかしの生まれ、神格を得ても高天原の神にはなれず、こうして人と共にある道を選んだだけの化け狐だ」

 わざとらしく七尾と獣耳を揺らす。

 化け物だと口にするわりには恐怖心を抱かそうとすら、思っていないのだろう。

「これは人の子に教えてもらった舞の一つだ。鎮魂の舞と呼んでいたか。別の名だったか。それすらも、確かではないような舞にすぎない」

「そう、なんですか」

「そうだ。だからこそ、これは俺ではなく香織が舞うべきものである。お前が習得したときには、多くの魂が救われることだろう」

 旭の言葉に香織は頷いてしまった。

(できない、かもしれない)

 まだ不安は残っている。

(期待しただけ無駄だって、言われるかもしれない)

 ずっと言われ続けた言葉だった。

(でも、わたしにも、誰かを救えるのならば)

 その方法を得るための手段も、師匠も手に入れることができる。

 この状況を手放すわけにはいかない。
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