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第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる

05-3.

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 香織の耳には、届いていた。

 旭の唄と商店街に響き渡る音の間に聞こえて来る魂たちが、感謝の言葉を呟いて黄泉へと渡っていく音が聞こえていた。

「歩む月日は異なりて。
 それもまた、世の慣わしであると」

 黄泉へと導く為の舞を踊る旭は、美しかった。

 唄いながら楽しげに舞う姿に合わせて鳴り響く音色は、何もかも包み込む。

 その優しい温もりに抱かれるようにして、黄泉へと導かれる。

 それは想像絶するほどに、美しくも恐ろしい光景だった。

(もしかして、黄泉に行く人たちを慰めているのかな)

 視る者を魅了する魂を黄泉へと導く舞を踊る旭は、楽しげに唄い飛び跳ねるように舞う。

 何もかもを魅了してしま楽しげな踊りとは異なり、旭の表情は様々な表情を顔や声を使って魅せる。

 時には、苦悩を隠すかのような表情をし、寂しげに狐の鳴き声を交える。

 悲しげだと思えば、途端に楽しげに舞ってみせる。

 それでも、舞だけは楽しげに踊っていた。

 様々な感情を表現しながらも、それすら楽しんでいるかのようだった。

(鎮魂の舞に近いのかな)

 先輩巫女が舞う姿を見たことがある。

(その舞も、旭様の舞を真似たのかな)

 無念を抱きながらも死を遂げた人々を慰める為の舞なのだと、事務的に教えられた舞とは異なるようにも感じられるものの、恐らく、その本質は同じなのだろう。

 もしかしたら、狐塚稲荷神社に古くから伝わる舞の数々は、旭の舞を模して作られたのかもしれない。

「温もり無き同胞を、その胸に抱き。
 巡る星をいざ落とさん」

 激しさを増す舞に応えるように狐火が空へと打ち上がる。

 流れ星のように宙を切った狐火は中央に集まり、花火のように輝きを放った後に消えていく。

 未だに囚われている魂は少なかった。
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