38 / 78
第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる
04-6.
しおりを挟む
(しかし、何たる偶然か)
旭は、香織のような存在を見たことがなかった。
強い霊力を浴び続けた羽織には、人の姿を隠す力と霊力を奪う力がある。
それは、香織のように強すぎる霊視の才を抑えることも出来るはずである。
そう考え、貸し与えた羽織は別の可能性を示した。
羽織を身に着けても尚、香織は狭間の世界に立っている。
それは、ただの人間には有り得ない現象だった。
(息絶える前に気付けたのは、幸いであるか)
香織は、霊視の才能が高すぎる人間の枠すらも飛び抜けている。
その高すぎる才能は、人間ともあやかしとも違う。
「香織。お前の才能は素晴らしいものだ。誇るべきものだ」
それに気づいたのは、幸いにも旭だけであった。
「なんと嬉しい誤算か。なんと喜ばしい日であることか」
狐塚一族の中に、あやかしの血が混ざっている者がいたのだろう。
その正体を明かさない道を選んだのか。薄まりすぎた血の正体を知らぬまま、人ならざる者が視える存在として一族に迎え入れられたのかはわからない。
しかし、その血は香織にも流れている。
そして、香織の中で混ざり合った。
人とあやかしの境界線を歩む者としての天命を与えられながらも、それに気づかず、人の道を選んだのだろう。
「お前の才を伸ばしてやらねばならぬな」
「え、あ、あの。旭様。わたし、視えるだけなんです」
「おかしなことを言う。聞こえもするのだろう?」
「え、あ、はい。聞こえも、しますけど」
不安感に押し潰されそうな声を上げる香織に対し、旭は上機嫌のままだ。
「触れはするかい?」
「たぶん、触れます」
「そうかい。それは珍しい」
二人のやり取りを聞いているだけの春博は少々面白くなさそうな顔をする。
両親以外は気にも留めない香織のことを春博は下に見ていた。
なんとなく、気にかかるところはあるが、それは見て見ぬふりを続けていたのは、からかう相手がいなくなってしまうと空しくなるのを知っていたからだ。
旭は、香織のような存在を見たことがなかった。
強い霊力を浴び続けた羽織には、人の姿を隠す力と霊力を奪う力がある。
それは、香織のように強すぎる霊視の才を抑えることも出来るはずである。
そう考え、貸し与えた羽織は別の可能性を示した。
羽織を身に着けても尚、香織は狭間の世界に立っている。
それは、ただの人間には有り得ない現象だった。
(息絶える前に気付けたのは、幸いであるか)
香織は、霊視の才能が高すぎる人間の枠すらも飛び抜けている。
その高すぎる才能は、人間ともあやかしとも違う。
「香織。お前の才能は素晴らしいものだ。誇るべきものだ」
それに気づいたのは、幸いにも旭だけであった。
「なんと嬉しい誤算か。なんと喜ばしい日であることか」
狐塚一族の中に、あやかしの血が混ざっている者がいたのだろう。
その正体を明かさない道を選んだのか。薄まりすぎた血の正体を知らぬまま、人ならざる者が視える存在として一族に迎え入れられたのかはわからない。
しかし、その血は香織にも流れている。
そして、香織の中で混ざり合った。
人とあやかしの境界線を歩む者としての天命を与えられながらも、それに気づかず、人の道を選んだのだろう。
「お前の才を伸ばしてやらねばならぬな」
「え、あ、あの。旭様。わたし、視えるだけなんです」
「おかしなことを言う。聞こえもするのだろう?」
「え、あ、はい。聞こえも、しますけど」
不安感に押し潰されそうな声を上げる香織に対し、旭は上機嫌のままだ。
「触れはするかい?」
「たぶん、触れます」
「そうかい。それは珍しい」
二人のやり取りを聞いているだけの春博は少々面白くなさそうな顔をする。
両親以外は気にも留めない香織のことを春博は下に見ていた。
なんとなく、気にかかるところはあるが、それは見て見ぬふりを続けていたのは、からかう相手がいなくなってしまうと空しくなるのを知っていたからだ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
護堂先生と神様のごはん あやかし子狐と三日月オムライス
栗槙ひので
キャラ文芸
中学校教師の護堂夏也は、独り身で亡くなった叔父の古屋敷に住む事になり、食いしん坊の神様と、ちょっと大人びた座敷童子の少年と一緒に山間の田舎町で暮らしている。
神様や妖怪達と暮らす奇妙な日常にも慣れつつあった夏也だが、ある日雑木林の藪の中から呻き声がする事に気が付く。心配して近寄ってみると、小さな子どもが倒れていた。その子には狐の耳と尻尾が生えていて……。
保護した子狐を狙って次々現れるあやかし達。霊感のある警察官やオカルト好きの生徒、はた迷惑な英語教師に近所のお稲荷さんまで、人間も神様もクセ者ばかり。夏也の毎日はやっぱり落ち着かない。
護堂先生と神様のごはんシリーズ
長編3作目
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
深夜に弟の部屋に侵入するブラコン姉さん
陸沢宝史
キャラ文芸
深夜、寝ていた雅晴は扉が開いた音で目が覚めてしまう。目覚めた雅晴の前には姉の咲織がいた。咲織はスマホの画面を雅晴に見せつける。そこには雅晴がクラスメートの女子と仲良く外出している写真が掲載されていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
金沢ひがし茶屋街 雨天様のお茶屋敷
河野美姫
キャラ文芸
古都・金沢、加賀百万石の城下町のお茶屋街で巡り会う、不思議なご縁。
雨の神様がもてなす甘味処。
祖母を亡くしたばかりの大学生のひかりは、ひとりで金沢にある祖母の家を訪れ、祖母と何度も足を運んだひがし茶屋街で銀髪の青年と出会う。
彼は、このひがし茶屋街に棲む神様で、自身が守る屋敷にやって来た者たちの傷ついた心を癒やしているのだと言う。
心の拠り所を失くしたばかりのひかりは、意図せずにその屋敷で過ごすことになってしまいーー?
神様と双子の狐の神使、そしてひとりの女子大生が紡ぐ、ひと夏の優しい物語。
アルファポリス 2021/12/22~2022/1/21
※こちらの作品はノベマ!様・エブリスタ様でも公開中(完結済)です。
(2019年に書いた作品をブラッシュアップしています)
【台本置き場】珠姫が紡(つむ)ぐ物語
珠姫
キャラ文芸
セリフ初心者の、珠姫が書いた声劇台本ばっかり載せております。
裏劇で使用する際は、報告などは要りません。
一人称・語尾改変は大丈夫です。
少しであればアドリブ改変なども大丈夫ですが、世界観が崩れるような大まかなセリフ改変は、しないで下さい。
著作権(ちょさくけん)フリーですが、自作しました!!などの扱いは厳禁(げんきん)です!!!
あくまで珠姫が書いたものを、配信や個人的にセリフ練習などで使ってほしい為です。
配信でご使用される場合は、もしよろしければ【Twitter@tamahime_1124】に、ご一報ください。
ライブ履歴など音源が残る場合なども同様です。
覗きに行かせて頂きたいと思っております。
特に規約(きやく)はあるようで無いものですが、例えば舞台など…劇の公演(有料)で使いたい場合や、配信での高額の収益(配信者にリアルマネー5000円くらいのバック)が出た場合は、少しご相談いただけますと幸いです。
無断での商用利用(しょうようりよう)は固くお断りいたします。
何卒よろしくお願い申し上げます!!
『古城物語』〜『猫たちの時間』4〜
segakiyui
キャラ文芸
『猫たちの時間』シリーズ4。厄介事吸引器、滝志郎。彼を『遊び相手』として雇っているのは朝倉財閥を率いる美少年、朝倉周一郎。今度は周一郎の婚約者に会いにドイツへ向かう二人だが、もちろん何もないわけがなく。待ち構えていたのは人の心が造り出した迷路の罠だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる