28 / 81
第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる
03-3.
しおりを挟む
(怖い神様だったら、どうしよう)
鬼を従者にしている神は少ない。
それも、知名度の低い一部の信仰だけを集めている神となれば、その正体が、実は人を喰らう性を持ったあやかしであったという話も珍しくはない。
陰陽師や僧侶、神主や巫女、と言った霊視の力を持つ人間により、祓われる危険性を回避する為だけに善き神を演じる。
昔から崇められている得体の知れない神には、少なくはない事例である。
(悪い神様だったら、どうしよう)
そうして祀られたあやかしは、神へと転じる。
人間の願いを叶え、その信仰心を集めた存在は、そのまま心を入れ替え、善き神となる者もいる。しかし、中には、霊視の力や祓う才能が失われつつある現代に、再び荒魂やあやかしとしての本能を露わにすることがある。
(わたし、ご飯にされちゃうのかも)
崇められていた存在が、人間を襲い喰う。
神だと信じられていたのは、人間を喰う妖怪であった。
そのような事例は、年に数件発生している。
耳を塞いでしまいたくなる程に、祖父母や父親から聞かされてきたことを思う。
(わたしの所為で、何かあったら、どうしよう)
五百年もの間、狐塚町を守って来た神は、何者なのだろうか。
白狐の神であるとされているものの、その正体は謎に包まれている。
善良な力を持った狐が多いとされているが、それは、誰が言い出したのか分からない。
(もしも、何か、あったら――)
些細な事が切っ掛けとなり、暴れ始める可能性を考える。
それは、恐怖からだろうか。
香織は、寒いとすら感じる風を感じた。
「おい。旭様の御前だぞ。名乗れ、小娘」
「はっ! はいっ! わっ、わたくし、狐塚稲荷神社の神主の娘でありますりゅ狐塚香織と申しましゅっ! ほっ、本日は、な、なな、何用でございましょうきゃ!?」
春博から声を掛けられて、慌てて、挨拶の言葉を発する。
鬼を従者にしている神は少ない。
それも、知名度の低い一部の信仰だけを集めている神となれば、その正体が、実は人を喰らう性を持ったあやかしであったという話も珍しくはない。
陰陽師や僧侶、神主や巫女、と言った霊視の力を持つ人間により、祓われる危険性を回避する為だけに善き神を演じる。
昔から崇められている得体の知れない神には、少なくはない事例である。
(悪い神様だったら、どうしよう)
そうして祀られたあやかしは、神へと転じる。
人間の願いを叶え、その信仰心を集めた存在は、そのまま心を入れ替え、善き神となる者もいる。しかし、中には、霊視の力や祓う才能が失われつつある現代に、再び荒魂やあやかしとしての本能を露わにすることがある。
(わたし、ご飯にされちゃうのかも)
崇められていた存在が、人間を襲い喰う。
神だと信じられていたのは、人間を喰う妖怪であった。
そのような事例は、年に数件発生している。
耳を塞いでしまいたくなる程に、祖父母や父親から聞かされてきたことを思う。
(わたしの所為で、何かあったら、どうしよう)
五百年もの間、狐塚町を守って来た神は、何者なのだろうか。
白狐の神であるとされているものの、その正体は謎に包まれている。
善良な力を持った狐が多いとされているが、それは、誰が言い出したのか分からない。
(もしも、何か、あったら――)
些細な事が切っ掛けとなり、暴れ始める可能性を考える。
それは、恐怖からだろうか。
香織は、寒いとすら感じる風を感じた。
「おい。旭様の御前だぞ。名乗れ、小娘」
「はっ! はいっ! わっ、わたくし、狐塚稲荷神社の神主の娘でありますりゅ狐塚香織と申しましゅっ! ほっ、本日は、な、なな、何用でございましょうきゃ!?」
春博から声を掛けられて、慌てて、挨拶の言葉を発する。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ルナール古書店の秘密
志波 連
キャラ文芸
両親を事故で亡くした松本聡志は、海のきれいな田舎町に住む祖母の家へとやってきた。
その事故によって顔に酷い傷痕が残ってしまった聡志に友人はいない。
それでもこの町にいるしかないと知っている聡志は、可愛がってくれる祖母を悲しませないために、毎日を懸命に生きていこうと努力していた。
そして、この町に来て五年目の夏、聡志は海の家で人生初のバイトに挑戦した。
先輩たちに無視されつつも、休むことなく頑張る聡志は、海岸への階段にある「ルナール古書店」の店主や、バイト先である「海の家」の店長らとかかわっていくうちに、自分が何ものだったのかを知ることになるのだった。
表紙は写真ACより引用しています
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜
瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。
大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。
そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。
耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
汐埼ゆたか
キャラ文芸
准教授の藤波怜(ふじなみ れい)が一人静かに暮らす一軒家。
そこに迷い猫のように住み着いた女の子。
名前はミネ。
どこから来たのか分からない彼女は、“女性”と呼ぶにはあどけなく、“少女”と呼ぶには美しい
ゆるりと始まった二人暮らし。
クールなのに優しい怜と天然で素直なミネ。
そんな二人の間に、目には見えない特別な何かが、静かに、穏やかに降り積もっていくのだった。
*****
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※他サイト掲載
アデンの黒狼 初霜艦隊航海録1
七日町 糸
キャラ文芸
あの忌まわしい大戦争から遥かな時が過ぎ去ったころ・・・・・・・・・
世界中では、かつての大戦に加わった軍艦たちを「歴史遺産」として動態復元、復元建造することが盛んになりつつあった。
そして、その艦を用いた海賊の活動も活発になっていくのである。
そんな中、「世界最強」との呼び声も高い提督がいた。
「アドミラル・トーゴーの生まれ変わり」とも言われたその女性提督の名は初霜実。
彼女はいつしか大きな敵に立ち向かうことになるのだった。
アルファポリスには初めて投降する作品です。
更新頻度は遅いですが、宜しくお願い致します。
Twitter等でつぶやく際の推奨ハッシュタグは「#初霜艦隊航海録」です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
横浜で空に一番近いカフェ
みつまめ つぼみ
キャラ文芸
大卒二年目のシステムエンジニア千晴が出会ったのは、千年を生きる妖狐。
転職を決意した千晴の転職先は、ランドマークタワー高層にあるカフェだった。
最高の展望で働く千晴は、新しい仕事を通じて自分の人生を考える。
新しい職場は高層カフェ! 接客業は忙しいけど、眺めは最高です!
公主の嫁入り
マチバリ
キャラ文芸
宗国の公主である雪花は、後宮の最奥にある月花宮で息をひそめて生きていた。母の身分が低かったことを理由に他の妃たちから冷遇されていたからだ。
17歳になったある日、皇帝となった兄の命により龍の血を継ぐという道士の元へ降嫁する事が決まる。政略結婚の道具として役に立ちたいと願いつつも怯えていた雪花だったが、顔を合わせた道士の焔蓮は優しい人で……ぎこちなくも心を通わせ、夫婦となっていく二人の物語。
中華習作かつ色々ふんわりなファンタジー設定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
下っ端妃は逃げ出したい
都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー
庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。
そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。
しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる