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第1話 狐塚町にはあやかしが住んでいる
01-5.
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(つい、忘れてしまっていた)
そのことを思い出し、旭は老婆に声を掛けたのだ。
決して人前には姿を見せない“白狐”を信仰する人間は、減っている。
休日には、参拝客が多く足を運ぶ神社ではあるが、それは“狐塚様”と慕われている白狐の存在を信じているからではない。
観光地として、あるいは、何か得体の知れない魅力に惹き寄せされたからであった。
だからこそ、毎日、参拝をしている老婆は珍しい。
気が向くままに生きる旭が、この日に限って老婆の隣に姿を現したのは、日ごろの感謝も込められているのかもしれない。
(芦屋の娘が大きくなったものだ)
思い返せば、この一週間ほど、狐塚に声を掛ける老婆の生気は落ち続けている。
年齢によるものであろうと気にもかけていなかったことではあったのだが、隣に立ち、老婆の呟いていた願いを耳にしてしまえば、その考えは間違っていたのだと思い知る。
(ばあさんが死しても気にならぬと思ってはいたのだが)
老婆の生気が落ちていたのは、その心を蝕む悩みがあったからだ。
そこまで気付いてしまえば、旭は、何もせずにはいられない。
(芦屋の娘ならば、まだまだ、死なすわけにはいかんな)
元より、人間が好きでもなければ興味もない。
人の世が乱れようとも、それもまた世の流れだと傍観に徹するだろう。
今までもそうして来た。
今日も傍観に徹するつもりだった。
「婆さん。アンタの孫は、芦屋を継ぐのかい?」
旭は、願いごとを呟く老婆に声を掛ける。
その質問は、意図の分からない問い掛けであった。
落ち続けている生気の影響を受け、その身体は、力のない眼と同様に重いだろう。
参拝をするだけでも苦しい思いをしてきたであろう老婆は、意味のなさそうな問いかけに顔を上げた。
「……ええ。芦屋の跡継ぎですよ」
それから、願いごとを呟くのを中断した老婆は、ゆっくりと身体を起こす。
そのことを思い出し、旭は老婆に声を掛けたのだ。
決して人前には姿を見せない“白狐”を信仰する人間は、減っている。
休日には、参拝客が多く足を運ぶ神社ではあるが、それは“狐塚様”と慕われている白狐の存在を信じているからではない。
観光地として、あるいは、何か得体の知れない魅力に惹き寄せされたからであった。
だからこそ、毎日、参拝をしている老婆は珍しい。
気が向くままに生きる旭が、この日に限って老婆の隣に姿を現したのは、日ごろの感謝も込められているのかもしれない。
(芦屋の娘が大きくなったものだ)
思い返せば、この一週間ほど、狐塚に声を掛ける老婆の生気は落ち続けている。
年齢によるものであろうと気にもかけていなかったことではあったのだが、隣に立ち、老婆の呟いていた願いを耳にしてしまえば、その考えは間違っていたのだと思い知る。
(ばあさんが死しても気にならぬと思ってはいたのだが)
老婆の生気が落ちていたのは、その心を蝕む悩みがあったからだ。
そこまで気付いてしまえば、旭は、何もせずにはいられない。
(芦屋の娘ならば、まだまだ、死なすわけにはいかんな)
元より、人間が好きでもなければ興味もない。
人の世が乱れようとも、それもまた世の流れだと傍観に徹するだろう。
今までもそうして来た。
今日も傍観に徹するつもりだった。
「婆さん。アンタの孫は、芦屋を継ぐのかい?」
旭は、願いごとを呟く老婆に声を掛ける。
その質問は、意図の分からない問い掛けであった。
落ち続けている生気の影響を受け、その身体は、力のない眼と同様に重いだろう。
参拝をするだけでも苦しい思いをしてきたであろう老婆は、意味のなさそうな問いかけに顔を上げた。
「……ええ。芦屋の跡継ぎですよ」
それから、願いごとを呟くのを中断した老婆は、ゆっくりと身体を起こす。
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