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第二話 【あやかし喫茶】は縁を結ぶ
01-5.
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「兄貴たちの遺骨も探してやれてない」
伊織は兄たちの最期の地を知らない。
軍に所属をしていながらも、配属された部署も戦地も違った。生物兵器として利用されていた伊織が行方知らずになった知らせは兄たちにも届けられていたのか、その手紙さえ届かない激戦地にいたのか、それすらも伊織は知らない。
遺骨は見つかっていない。
墓の中に収められている兄たちの遺品の一部だ。
それを遺骨の代わりに収められているのだということは知っている。
「俺にできることなんてなにもない」
伊織は後悔の中にいた。
人の道を外れた伊織にできることはない。
それでも恋しくてしかたがない。両親や兄たちにかわいがられていた日々は、ゆっくりと伊織の心の中から消えて行ってしまう。
まるで人であった伊織が消えてなくなってしまうかのようだった。
それがどうしようもなく恐ろしかった。
「だから、せめて、姉さんだけでも見送りたいんだ」
墓参りをした日、美香子は伊織を拒絶しなかった。
それどころか、生きているはずだと信じていくれた。それが墓石に伊織の名が刻まれていない証拠だった。
美香子も、亡くなった両親も、伊織がどこかで生きているはずだと信じ続けていたのだろう。
「伊織さんが人の思い出を大切にしているのはわかりました。あの婆さんだけは若葉も家族のように受け入れてあげましょう」
若葉は伊織を悩ませたいわけではない。
ただ心配をしているだけだ。
「でも、あの坊やは違います」
若葉は伊織の心を確かめるように言葉を続ける。
「あの坊やは伊織さんの家族ではないでしょう。伊織さんの人の家族は婆さんだけです。それ以外は血が繋がっているだけの他人ですよ」
若葉は断言する。
同じ池で生まれ育った河童たちは、若葉の血の繋がった家族だ。しかし、若葉を拒絶し、仲間外れにした河童たちのことを家族とは思えない。
血の繋がりだけが家族ではない。
血が繋がっていなくても、家族にはなれる。
若葉はそのことを知っている。他でもない伊織が若葉に教えてくれたことだった。
伊織は兄たちの最期の地を知らない。
軍に所属をしていながらも、配属された部署も戦地も違った。生物兵器として利用されていた伊織が行方知らずになった知らせは兄たちにも届けられていたのか、その手紙さえ届かない激戦地にいたのか、それすらも伊織は知らない。
遺骨は見つかっていない。
墓の中に収められている兄たちの遺品の一部だ。
それを遺骨の代わりに収められているのだということは知っている。
「俺にできることなんてなにもない」
伊織は後悔の中にいた。
人の道を外れた伊織にできることはない。
それでも恋しくてしかたがない。両親や兄たちにかわいがられていた日々は、ゆっくりと伊織の心の中から消えて行ってしまう。
まるで人であった伊織が消えてなくなってしまうかのようだった。
それがどうしようもなく恐ろしかった。
「だから、せめて、姉さんだけでも見送りたいんだ」
墓参りをした日、美香子は伊織を拒絶しなかった。
それどころか、生きているはずだと信じていくれた。それが墓石に伊織の名が刻まれていない証拠だった。
美香子も、亡くなった両親も、伊織がどこかで生きているはずだと信じ続けていたのだろう。
「伊織さんが人の思い出を大切にしているのはわかりました。あの婆さんだけは若葉も家族のように受け入れてあげましょう」
若葉は伊織を悩ませたいわけではない。
ただ心配をしているだけだ。
「でも、あの坊やは違います」
若葉は伊織の心を確かめるように言葉を続ける。
「あの坊やは伊織さんの家族ではないでしょう。伊織さんの人の家族は婆さんだけです。それ以外は血が繋がっているだけの他人ですよ」
若葉は断言する。
同じ池で生まれ育った河童たちは、若葉の血の繋がった家族だ。しかし、若葉を拒絶し、仲間外れにした河童たちのことを家族とは思えない。
血の繋がりだけが家族ではない。
血が繋がっていなくても、家族にはなれる。
若葉はそのことを知っている。他でもない伊織が若葉に教えてくれたことだった。
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