あやかし喫茶の縁結び

佐倉海斗

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第一話 墓参りは姉弟の縁を結び直す

02-7.

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「大丈夫だよ、七海。君は一人ではないから」

 伊織には七海の涙を拭うことはできない。

 昔のように抱っこをしてあげることはできない。

「心配はいらないよ。何があっても、上手くいくから」

 それでも、せめて思い出だけは綺麗な姿のままでありたかった。

「……本当に、おじちゃんなの?」

 七海の声が震えていた。

「おじちゃん、わたしは、優斗のことが可愛いの。可愛い孫なの」

 偽物である可能性を疑っていないのだろう。

 このご時世、都合の良い嘘で人々の心に付け入れる詐欺師は少なくない。特に人ならざる者となった家族を騙り、金銭を巧みに奪う事件は毎日のように引き起こされている。

「でも、怖くて。……おじちゃんみたいにいなくなったら、どうしようって」

 ……そうか、この子の心には傷が残ったままだったのか。

 それは七海の両親である美香子たちが癒す努力をしたのか、わからない。少なくとも母親の美香子は七海の心の傷にまで気を配ることは難しかっただろう。

 美香子も心の傷を癒しきれていない。

 兄弟の中でも特に可愛がっていた弟が景色に解け込むように目の前で消えてしまった体験は、美香子の心に大きな傷を残したことだろう。

 両親に責められたこともあるだろう。
 兄弟に責められたこともあるだろう。

 人の身ではどうすることもできなかった事実に心を痛めたことだろう。

 それでも、母親として娘の心の傷に気付くべきだった。

 ……人の心など薄れたと思っていたが。

 それは同情だろうか。それとも罪悪感だろうか。

 ……そういうわけでもないようだ。

 人として歩んだ年月よりも、鬼として歩み始めた年月の方が長い。

 これから先も終わりの見えない年月を歩み続けていくだろう。

「それで、母さんが、おじちゃんに言ってくれるって……。わかってたのに。おじちゃんなら、しっかりと教えてくれるって、知ってたのに。ごめんなさい、ごめんなさいっ」

 七海の目から大粒の涙が零れ落ちる。

 七十代になった七海には幼い頃の面影はあまりない。

「おじちゃんっ」

 伊織が可愛がっていた幼い頃の七海は成長して立派な女性になった。
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