あやかし喫茶の縁結び

佐倉海斗

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第一話 墓参りは姉弟の縁を結び直す

02-5.

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「失礼なことを言うんじゃないよ!! まったく」

 画面がまた揺れた。
 今度は美香子の姿が映し出されている。

 ……あの頃と同じ顔をしている。

 不服そうな表情を浮かべる美香子には昔の面影がある。

 それを見つけ出し、伊織は悲しそうに笑った。

「美香子姉さん」

 隣に並んで覗き込んでいる七海の目が丸くなる。

「アンタたちが関わっていいもんじゃねえ。人の目に映らない化け物なんかに頼る暇は残されてねえだろ」

 七海の目には伊織の姿が映し出されていないものの、声は届いたのだろう。

 それも機械越しだからこそ聞こえているだけに過ぎないということは、身をもって知っている。

「七海」

 数十年前、抱き上げた温もりを思い出すことはできない。

 事実として覚えているだけの日々は長い年月に埋もれていくだろう。

「あんなに小さかったのにな」

 抱き上げ、遊び相手を務めた日々のことを当時三歳だった七海が覚えているとは限らない。楽しかった日々よりも目の前でいなくなってしまった恐怖感の方が強く残っている可能性もある。

 写真を見返した時にそんなこともあったのだと美香子に思い出話を聞かされているからこそ、いなくなった叔父の存在を認識している程度のものかもしれない。

 確かに存在したはずの日々の思い出は霞んでしまっている。

 それがどうしようもなく悲しく、同時に愛おしい日々だった。

「大きくなったな。七海」

 それでも、七海は可愛い姪だった。

 何人もいたはずの甥や姪の中でも七海は伊織に懐いていた。

 それが嬉しく、可愛がっていたことを思い出す。

「俺の声は届いているな?」

 年齢を重ね、頑固なところが目立つようになってきた美香子ではなく、姿が視えずに困惑をしている七海の方が説得をしやすいだろう。

「困惑していることだろう。お前の目には俺の姿は視えていないことはわかっている」

 伊織は可能な限り、優しい声を出す。

 声は記憶には残りにくい。しかし、昔の記憶を呼び起こす切っ掛けにはなる。
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