あやかし喫茶の縁結び

佐倉海斗

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第一話 墓参りは姉弟の縁を結び直す

02-4.

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 美香子が手招きをするような仕草が見えていた為、近くにいた誰かと変わったのだろう。美香子の代わりに画面に映し出されたのは美香子の面影を持つ七十代の女性だった。女性は何度も瞬きをしている。

「……おじちゃん?」

 伊織のことを叔父と呼ぶ人は限られている。

 しかし、画面に映し出されている七十代の女性はいろいろなところに視線を向けている。その目には伊織の姿が映っていないのだろう。

「ちょっと、お母さん。おじちゃんの姿なんて映ってないじゃないの。さっきから誰と話していたの? 若い男の人に電話なんかして騙されているんじゃないでしょうね!?」

 女性の言葉に対し、伊織は笑い声をあげる。

 それに対して女性は眉を潜めていた。声は聞こえるのにもかかわらず、姿が見えないことに対して不信感を抱いているのだろう。

 ……七海か。

 女性、山田七海のことを伊織は知っている。

 記憶の中の七海は小さな子どもだった。

 走り回ることが大好きな子どもだった。

 ……大きくなったものだ。

 僅かに残っている面影を重ねてしまう。

 それだけで心が痛むのはなぜだろうか。

 人として過ごした日々の中に置き去りとなったはずの心が悲鳴を上げる。歳が離れていたはずの姪を黄泉に見送る日も遠くはないだろう。

 長寿を誇る鬼の伊織にとって数十年の年月はあまりにも短く、儚いものだということは身をもって知っている。

「なに言ってんだい、七海」

「こっちの台詞よ。それにしても広い部屋ね。おじちゃんって生きているなら九十代でしょ? こんな広いところで一人暮らしをするなんて無理なんじゃないの。お母さん、やっぱし、歳なんだから病院でしっかり調べてもらおうよ」

 その言葉に対し、伊織は心の中で同意する。

 ……それが当然の反応だ。

 母親の気がおかしくなったのではないかと心配するのは当然だろう。

 ……視えているのがおかしいんだと気づいてくれよ。

 一か月前、縋りつくように結んでしまった綻びた縁を思う。

 結んだはずの縁は今にも解けてしまいそうなものだ。それは伊織が結ぶのが下手なのではなく、美香子に残された寿命が短いことを示すものだった。
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