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第一話 墓参りは姉弟の縁を結び直す
01-9.
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頭では理解をしていることだった。
それなのにもかかわらず、心が追い付いていかない。
二度と交わることはないと諦めていた縁だった。その視界には映ることはないのだろうと思っていた。
万が一のことがあったとしても、両親の時のように受け入れられることはないのだろうと思うことで諦めたつもりだった。
「伊織!!」
それらは全て意味がなかった。
美香子は伊織の名を呼んでいる。昔のように笑いかけてくれた。
「どこに行っちまったんだい! 伊織!!」
再び繋がった縁が恋しくなったのだろうか。
途切れないように縋りつくかのように彼岸のものを渡していた。
人間が生きる此岸の世界では存在をしない植物によって編み込まれた紙で作られた名刺は、美香子と伊織を結びつけるだろう。
……ごめん、姉さん。
あやかしたちが好む彼岸のものは人間にはよくない影響を与える。
あやかしと縁を結ぶのはよくないことだとわかっていた。
* * *
彼岸と此岸の境界を歩く。
人の眼には映らない彼岸に足を踏み入れた途端、景色が変わる。
「坊や」
生気溢れる人の世とは異なり、多種多少な見た目のあやかしで溢れている古き良き時代の名残がある小道を歩いていると声をかけられた。
「姐さん」
伊織は声をかけてきた女性の鬼に対し、慌てて、和傘を畳む。
人の良さそうな顔をする女性の鬼、春日は和傘を差していたとしても咎めないだろう。伊織が所属をする鬼頭自警団の幹部の一人であり、鬼と成った伊織を拾った保護者でもある。
「ただいま戻りました」
「おかえり。迷いはしなかったかい?」
「はい。迷子になりませんでした」
伊織の言葉に対し、春日は微笑んだ。
それから慣れた手つきで伊織の髪を撫ぜる。子どもを慈しむような素振りをする時は、春日の気に障るようなことをした時だ。
それに気づき、伊織は反射的に目を反らした。
心当たりがあったからだろう。
それなのにもかかわらず、心が追い付いていかない。
二度と交わることはないと諦めていた縁だった。その視界には映ることはないのだろうと思っていた。
万が一のことがあったとしても、両親の時のように受け入れられることはないのだろうと思うことで諦めたつもりだった。
「伊織!!」
それらは全て意味がなかった。
美香子は伊織の名を呼んでいる。昔のように笑いかけてくれた。
「どこに行っちまったんだい! 伊織!!」
再び繋がった縁が恋しくなったのだろうか。
途切れないように縋りつくかのように彼岸のものを渡していた。
人間が生きる此岸の世界では存在をしない植物によって編み込まれた紙で作られた名刺は、美香子と伊織を結びつけるだろう。
……ごめん、姉さん。
あやかしたちが好む彼岸のものは人間にはよくない影響を与える。
あやかしと縁を結ぶのはよくないことだとわかっていた。
* * *
彼岸と此岸の境界を歩く。
人の眼には映らない彼岸に足を踏み入れた途端、景色が変わる。
「坊や」
生気溢れる人の世とは異なり、多種多少な見た目のあやかしで溢れている古き良き時代の名残がある小道を歩いていると声をかけられた。
「姐さん」
伊織は声をかけてきた女性の鬼に対し、慌てて、和傘を畳む。
人の良さそうな顔をする女性の鬼、春日は和傘を差していたとしても咎めないだろう。伊織が所属をする鬼頭自警団の幹部の一人であり、鬼と成った伊織を拾った保護者でもある。
「ただいま戻りました」
「おかえり。迷いはしなかったかい?」
「はい。迷子になりませんでした」
伊織の言葉に対し、春日は微笑んだ。
それから慣れた手つきで伊織の髪を撫ぜる。子どもを慈しむような素振りをする時は、春日の気に障るようなことをした時だ。
それに気づき、伊織は反射的に目を反らした。
心当たりがあったからだろう。
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