上 下
39 / 42
第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る

04-8.

しおりを挟む
「バカセシル」

 エドワードは吹っ切ったのだろう。

 成立してしまった婚約は簡単には白紙には戻らない。それはわかっているものの、自覚してしまった恋心を心の奥底に片付けることはエドワードにはできない。

「お前が結婚するまでの間に、俺に惚れさせてやる」

 エドワードは宣言をした。

 それはセシルにとって不快でしかない言葉だ。

「ハヴィランドとの婚約を白紙に戻せるように権力を握ってやるし、絶対にセシルを不幸にさせねえから」

 エドワードは本気だった。

 本気で言っているのだとわかっているからこそ、セシルは嫌そうな顔をする。

「……バカ王子」

 セシルは嫌々ながら前に出た。

 ブライアンの後ろに隠れていたい気持ちはあったものの、エドワードの真っすぐすぎる言葉を聞き、セシルだけが逃げるわけにはいかないと考え直したのだろう。

「俺はルシアンが好きだから。だから、お前のことは好きにならない」

「知ってる。でも、これからはどうなるかわからねえだろ? 隙だらけのハヴィランドを出し抜いて、俺に惚れさせてやるからな。覚悟をしとけよ」

「偉そうに。ルシアンに勝てるとでも思ってるのかよ」

 セシルの言葉を聞き、エドワードは笑った。

「あんな格下、相手にもならねえよ」

 エドワードはルシアンのことを下に見ている。

 ハヴィランド辺境伯爵家が担っている役割のことを知らないわけではないだろうが、他人の思惑に踊らされてしまいそうなルシアンの性格を知っているからこそ、エドワードはルシアンのことを気に留めてこなかった。

 そんな相手に意中の人を奪われるとは思ってもいなかった。

「俺の方がセシルが好きだしな。その時点で勝ってるようなもんだろ」

 エドワードの自信満々の言葉を聞き、セシルはため息を零した。

「バカじゃないの」

 セシルはエドワードと喧嘩をする気にもなれなかった。

 ただ、本気で言っているということはわかった。

 ……否定してやりたいのに。

 セシルを愛しているのはルシアンだと自信を持って言い切ってしまいたい。しかし、それはできなかった。愛されている自信がどこにもない。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

天使様はいつも不機嫌です

白鳩 唯斗
BL
 兎に角口が悪い主人公。

モラトリアムは物書きライフを満喫します。

星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息 就職に失敗。 アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。 自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。 あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。 30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。 しかし……待てよ。 悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!? ☆ ※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。 ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

ギャルゲー主人公に狙われてます

白兪
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。 自分の役割は主人公の親友ポジ ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、

使命を全うするために俺は死にます。

あぎ
BL
とあることで目覚めた主人公、「マリア」は悪役というスペックの人間だったことを思い出せ。そして悲しい過去を持っていた。 とあることで家族が殺され、とあることで婚約破棄をされ、その婚約破棄を言い出した男に殺された。 だが、この男が大好きだったこともしかり、その横にいた女も好きだった なら、昔からの使命である、彼らを幸せにするという使命を全うする。 それが、みなに忘れられても_

処理中です...