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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る

04-6.

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「俺に言うことがあるんじゃねえのか。セシル」

 エドワードはセシルを睨みつけながら、催促をする。

 謝るのならば許してやると言わんばかりの態度だ。それに対し、セシルは心の底から嫌そうな顔をした。

「……殴ってごめん」

 セシルは感情の籠ってない言葉を口にする。

 殴り合いになるのはいつものことだ。顔を見合わせれば喧嘩ばかりである。それを今になって謝罪するのは違和感がある。

 それでも、謝罪をしたという事実が必要なのだ。

 ブライアンに諭されたから謝罪の言葉を口にしただけだということを隠そうともせず、セシルはエドワードを見る。

「それじゃないだろ」

 エドワードは妥協をしない。

 なにもかも思い通りにいかないことはエドワードも知っている。それでも、自覚してしまった恋心だけは簡単には手放せなかった。

「俺は謝っただろ。他になにを謝れと?」

「俺の告白を断ったことを謝れ。謝って撤回しろ」

「は? まだ正気に戻ってないわけ?」

 セシルはブライアンの後ろに隠れるのを止め、前に出る。

「セシル。手を出してはいけないよ」

 ブライアンは注意をするだけだ。

 実際に殴り合いの喧嘩になったところで、今度は止めないだろう。

 お茶会の場でセシルとエドワードの喧嘩の仲裁をしたのは、あの場に王妃陛下がいたからだ。

「俺は正気だが?」

 エドワードは引かない。

「何度でも言ってやるよ。俺はセシルが好きだからな」

 エドワードの言葉を聞き、セシルは眉をひそめた。

 ……嬉しくない。

 意中の相手には言ってもらえない言葉だ。

 婚約を白紙に戻される可能性が浮上しても傍観に徹していたルシアンの性格を考えれば、セシルが催促をすれば好意を口にするかもしれない。

 しかし、それはセシルが強要したのにすぎない。

 一方的な愛情がほしいわけではない。愛を強要したいわけでもない。

「お前に言われても、嬉しくないのに」

 セシルは本音を口にした。
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