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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る

04-2.

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「それは本当かい?」

 ブライアンは優しくセシルを宥めながら、問いかけた。

「セシル。可愛い弟の為だから、兄様は少しだけ厳しいことを言うよ」

 前置きをする。

 そうしなければ、セシルはブライアンの言葉に耳を傾けないかもしれないからだ。

 それがわかっているからこそ、ブライアンはセシルの背中を布団越しに撫ぜながら、セシルことを何よりも考えているかのような声をかける。

 ブライアンは笑っていた。

 セシルが見ることができないことを知っているからこそ、表情まで気を回していなかったのだろう。

「ルシアン・ハヴィランドは、セシルに恋愛感情を抱いているわけではないよ」

 ブライアンの言葉に根拠はない。

「セシルのことを好きと言ったのは事実だろうね。でも、それは友人としてという意味でしかないよ」

 ブライアンの言葉を聞き、布団の中に引きこもっているセシルの体が僅かに動いた。

 否定したいと思いつつ、ブライアンが根拠もなく嘘を吐くはずもないという思いで心が揺らいでいるのだろう。

 ブライアンはわざとらしく、ルシアンに似せた口調で話を続ける。

 セシルに言い聞かせるのには、セシルが恋をしているルシアンのような口調で伝えるのが効率が良い。

 そこまで計算されていることをセシルは知らない。

「セシルが兄様に教えてくれただろう?」

 ブライアンは追い打ちをかける。

「婚約を破談にさせると言われても、ルシアン・ハヴィランドは怒らなかったと言ったよね? そんなことを他人に言われて、怒らないでいられる婚約者なんていないよ。ありえないんだよ」

 ブライアンの言葉を聞き、セシルは我慢ができなかった。

 ついに布団の中に引きこもるのを止め、顔を出した。

 涙に濡れて、情けのない顔をしながらブライアンに視線を向ける。

「セシル」

 ブライアンはすぐに移動した。

 セシルを慰めるように、髪を撫ぜる。

 事前に用意してあったのだろうハンカチをポケットから取り出し、セシルの涙を拭った。
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