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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る

03-10.

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 そして、二人の関係を認めると公言させるべきだった。

 そうすれば、アリシアも諦めたかもしれない。今になって、その絶好の機会を邪魔されてしまっていたことに気づいた。

 ……兄様のバカ。意地悪。

 ブライアンは喧嘩を止めに来ただけではない。

 エドワードが二人の婚約を認めるような発言をする前に、エドワードを応接室に誘導したのだ。そのことに気づき、セシルはため息を吐く。

 ……兄様のバカ。

 ルシアンとの婚約を賛成しているのは、デズモンドだけだ。

 それは宰相として婚約を結ぶしかなかっただけであり、父親としては心の底から反対をしたいはずである。

「ルシアンはなにも思わないのか」

 セシルは黙ってはいられなかった。

 大声で婚約を破談させてやると宣言したエドワードの傍にいたルシアンは、茫然としていただけだ。

 なにも言わなかった。

 人々の目には、婚約が白紙になることを望んでいるかのように見えていたかもしれないのにもかかわらず、ルシアンは自分の意思を口にしない。

「……そんなことないよ」

 ルシアンは曖昧な言葉を口にする。

 セシルを宥めるかのように優しく髪に触れながら、セシルの気持ちはわかっていると言わんばかりの態度を示す。

 それだけではセシルが満足しないことをルシアンは知っている。

 それなのに、ルシアンは一歩を踏み出すことができずにいた。

「少しだけ、怖くなっただけだよ」

「なにが怖いんだよ」

「セシルの婚約者は僕なのに。物語は強制的に進んでいくんだって、実感させられたからかな」

 ルシアンの言葉を聞き、セシルは眉を顰めた。

 ……その設定、まだ続くのか。

 セシルはルシアンの秘密をすべて信じているわけではない。

 ……そんなに大事なこととは思えないけど。

 転生したという話は本当だろうと思っているものの、話の半分以上を理解することができていなかった為、なにを信じればいいのか、よくわかっていないのだ。
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