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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る

03-9.

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「怒らないで。セシル。良い子だから、わかってくれるだろう?」

 ブライアンの言葉に対し、セシルは不満そうな顔を隠すこともなく、頷いた。

 ……仲直りなんてしないけど。

 そもそも、原因はエドワードにある。

 エドワードが謝るのならば、それを許してあげてもいい。

 セシルはそんなことを考えながら、ブライアンの提案を受け入れたかのように振る舞っていた。

「兄様。ルシアンのところに行ってもいい?」

「構わないよ」

 セシルはブライアンの許可を得た途端、走り出した。

 走り出した勢いのまま、茫然としたままのルシアンに飛びつく。

「ルシアン!」

 まるで何年も会うことが許されなかった恋人と再会したかのような勢いだ。セシルは勢いのままにルシアンに飛びつき、そのまま、抱きしめる。

「ケガしてないか?」

 セシルはルシアンを心配そうに見上げる。

 背中に両腕を回し、不安そうに首を傾げた。

 その可愛らしい仕草にルシアンの頬は赤く染まる。

「それは僕のセリフだよ」

 ルシアンは慣れているかのようにセシルの頭を撫ぜた。

「殴られたところ、痛いよね」

 ルシアンはセシルが殴られていたところを見てしまった。

 喧嘩が始まったことに気づき、同席していた夫人たちの制止も聞かずに駆け寄ったのだろう。すぐにでも、セシルを抱きしめたい気持ちを抑え、暴れているエドワードを取り押さえることを優先した。

 そのことをルシアンは後悔していた。

「俺も殴ってやったから痛くない」

「そんなわけがないでしょ。殴った手も痛いはずだよ」

「大丈夫だって! 俺よりもルシアンが嫌な思いしただろ?」

 セシルはルシアンを抱きしめながら、笑う。

「もっと殴ってやりたかったのに」

 セシルは納得していなかった。

 エドワードのルシアンを軽視する発言が許せなかった。

 なにより、二人の関係を壊そうとするエドワードを許せなかった。

 ……失敗した。

 エドワードには謝罪をしてもらうべきだった。
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