上 下
26 / 42
第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る

03-8.

しおりを挟む
 ……ありえない。

 セシルはエドワードの正気を疑う。

 まともに穏やかな会話だけで終わったことがなく、ほとんどが殴り合いになるような関係だ。

 母親同士の仲が良い為、度々顔合わせをさせられるものの、相性が悪いのだろう。売り言葉に買い言葉となり、喧嘩ばかりをしてきた。

 それなのに、急に告白をされても気味が悪いだけだった。

 ……呪われた?

 疑わしいのは、エドワードが何らかの呪いを受けた可能性だ。

 他人の恨みを買いやすく、第三王子ではあるのだが、なにかと軽視されている。

 王妃の子であるのにもかかわらず、軽視されているのは、エドワードの出生に秘密があるからではないかという根拠のない噂が広まっていることくらいは、セシルも知っていた。

 だからこそ、同情の籠った視線をエドワードに向けていた。

「エドワード王子を応接室にお連れしてくれ。落ち着かせた方が良いだろう」

 ブライアンは無言のまま俯いているエドワードに気を遣ったのだろうか。いや、セシルに対する告白が気に入らなかっただけなのかもしれない。

 どちらにしても、エドワードはこの場にいるべきではないだろう。

 一世一代の告白は一瞬で散ってしまった。

 それも、迷うこともなく、振られてしまった。

 それはお茶会だけの話題で留まらないだろう。

「セシル。王子には兄様が事情を話しておくから。早めに仲直りをしてあげるんだよ。いいね?」

「兄様。俺はなにも悪いことをしてない」

「セシルの言い分はわかる。でも、相手は王子なんだ。セシルが譲ってあげられるところは、譲ってあげようか」

 ブライアンの言葉を聞き、セシルは頬を膨らめた。

 ……兄様はすぐにエドワードを庇う。

 エドワードが王位を継ぐと思っているわけではないだろう。

 しかし、アクロイド侯爵家にはエドワードの存在は大きい。

 エドワードを手中に収めることができたのならば、侯爵家の権力はさらに大きなものになるだろう。

 ブライアンはエドワードを利用するつもりだ。

 それに気づき、セシルは不満そうな視線をブライアンに向けた。

 背を向けた先で、エドワードがアクロイド侯爵家の執事に支えられる形で応接間に誘導されていることにすらも気づかず、セシルはブライアンを見上げる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

今世では誰かに手を取って貰いたい

朝山みどり
BL
ノエル・レイフォードは魔力がないと言うことで、家族や使用人から蔑まれて暮らしていた。 ある日、妹のプリシラに突き飛ばされて、頭を打ち前世のことを思い出し、魔法を使えるようになった。 ただ、戦争の英雄だった前世とは持っている魔法が違っていた。 そんなある日、喧嘩した国同士で、結婚式をあげるように帝国の王妃が命令をだした。 選ばれたノエルは敵国へ旅立った。そこで待っていた男とその日のうちに婚姻した。思いがけず男は優しかった。 だが、男は翌朝、隣国との国境紛争を解決しようと家を出た。 男がいなくなった途端、ノエルは冷遇された。覚悟していたノエルは耐えられたが、とんでもないことを知らされて逃げ出した。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

眠りに落ちると、俺にキスをする男がいる

ぽぽ
BL
就寝後、毎日のように自分にキスをする男がいる事に気付いた男。容疑者は同室の相手である三人。誰が犯人なのか。平凡な男は悩むのだった。 総受けです。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

全力でBのLしたい攻め達 と ノンケすぎる受け

せりもも
BL
エメドラード王国第2王子サハルは、インゲレ王女ヴィットーリアに婚約を破棄されてしまう。王女の傍らには、可憐な男爵令嬢ポメリアが。晴れて悪役令息となったサハルが祖国に帰ると、兄のダレイオが即位していた。ダレイオは、愛する弟サハルを隣国のインゲレ王女と結婚させようとした父王が許せなかったから殺害し、王座を奪ったのだ。 久しぶりで祖国へ帰ったサハルだが、元婚約者のエルナが出産していた。しかも、彼の子だという。そういえばインゲレ王女との婚約が調った際に、エルナとはお別れしたのだった。しかしインゲレ王女との婚約は破棄された。再び自由の身となったサハルは、責任を取ってエルナと結婚する決意を固める。ところが、結婚式場で待ったが入り、インゲレからやってきた王子が乱入してきた。彼は姉の婚約者だったサハルに、密かに恋していたらしい。 そうこうしているうちに、兄ダレイオの子ホライヨン(サハルの甥)と、実の息子であるルーワン、二人の幼児まで、サハルに異様に懐き……。 BLですが、腐っていらっしゃらない方でも全然オッケーです! 遅くなりました! 恒例の、「歴史時代小説大賞、応援して下さってありがとうございます」企画です! もちろん、せりももが歴史小説書いてるなんて知らなかったよ~、つか、せりももって誰? という方も、どうか是非、おいで下さいませ。 どちらさまもお楽しみ頂ければ幸いです。 表紙画像(敬称略) [背景]イラストACふわぷか「夕日の砂漠_ラクダ」 [キャラクター]同上イラレア 「緑の剣士」

使命を全うするために俺は死にます。

あぎ
BL
とあることで目覚めた主人公、「マリア」は悪役というスペックの人間だったことを思い出せ。そして悲しい過去を持っていた。 とあることで家族が殺され、とあることで婚約破棄をされ、その婚約破棄を言い出した男に殺された。 だが、この男が大好きだったこともしかり、その横にいた女も好きだった なら、昔からの使命である、彼らを幸せにするという使命を全うする。 それが、みなに忘れられても_

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移要素はありません。

処理中です...