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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る

03-5.

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「もう殴ったから。それで満足しようよ」

「まだ足りない!」

 ブライアンに羽交い絞めにされながらも、セシルは抵抗する。

 ブライアンの制止の声は届かない。

 それでも、抵抗しながらもブライアンに手を出さないのは理性が残っているからなのだろうか。

「殿下も止めてくださいよ!」

 ブライアンに羽交い絞めをされているセシルを殴りに行こうとするエドワードを取り押さえたのは、ルシアンだった。

「触るんじゃねえ! 不敬罪で捕まえてやる!!」

 エドワードは先ほどよりも怒っている。

 よりにもよって、ルシアンに取り押さえられているのが許せないのだろう。

「ルシアンがバカ王子を構ってる!」

「彼以外にエドワード王子を取り押さえれないんだから、仕方がないでしょ」

「兄様ができる!」

 セシルはそれすらも気に入らなかった。

 地面を何度も蹴りながら、駄々をこね始めたセシルに対し、ブライアンは困ったように笑って見せた。

「俺はセシルを抑えてるから無理だよ」

「俺は大人しくできるから!」

「だめ。このまま、兄様と一緒にいようね」

 セシルの我儘はいつものことだ。

 なにより、場所を交代するなどブライアンは考えもしない。

「でも、嫌だ!」

 セシルはルシアンを独り占めしたい。

 それが初めての友人に対する行き過ぎた感情なのか。

 それとも、ルシアンに恋をしているのか。

 セシルにも、まだわからなかった。

「ルシアンは俺なのに!」

 思わず、口にしてしまった言葉で周囲の動きが止まる。

 セシルを宥めていたブライアンも言葉を失っていた。

「はぁ?」

 それに対し、エドワードだけが素早く反応した。

 セシルの言葉を聞き、頬を赤くしたまま思考が停止してしまったルシアンの隙に付け込み、エドワードはルシアンを振り払った。

 そのままの勢いでセシルの元に駆けだしてきた。
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