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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る

03-2.

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「アリシアに呼ばれたから来てやったんだろ。喜べよ」

「最悪。俺のお母様を呼び捨てにするなよ、バカ王子。城に帰れ」

「はっ、嫌そうな顔をするなよ。この俺が、バカセシルに会いに来てやったんだ。少しは喜んでみせろよ」

 エドワードはセシルの頬を指で掴もうと手を伸ばした。

 反射的にそれを振り払い、セシルは心底嫌そうな顔をした。

 ……最悪。

 セシルはエドワードが好きではない。

 珍しく、会話が続いているものの、長くは続かないだろう。

 気づけば、いつも殴り合いになっているのだ。

「バカ王子なんか見たくないんだけど。向こう行けよ」

 ルシアンに対する警戒心のない笑みは浮かべない。

 野良犬を追い払うように手を振るセシルに対し、エドワードは笑っていた。――いや、顔は笑ってはいるものの、目は笑っていない。

 ……機嫌悪いなら、話しかけてくるなよ。

 セシルでも察してしまうほどにエドワードは機嫌が悪い。

 それに気づき、セシルは面倒そうに周囲を見渡した。

 腰巾着のようにエドワードに付き従っている子どもたちは、自分たちでは手に負えないのだと身振り手振りで必死にセシルに訴えていた。

 どうやら、彼らはエドワードを止めようとしたようだ。

 アクロイド侯爵邸で殴り合いに発展するのは、エドワードの今後の為にも良くないことだと考え、普段は全肯定の腰巾着をしていることを忘れたかのように、必死に止めようとはしたのだろう。

 セシルもそれを察した。

 察してはいたが、エドワードの機嫌を取るような振る舞いはセシルにはできない。そんなことをするくらいならば、アリシアに説教をされる覚悟をしてエドワードを殴り飛ばした方が良いとすら考えていた。

「お前、俺のだよな?」

「そんなわけねえだろ。バカ王子がさらにバカになってるぞ。お医者様に頭を見てもらった方がいいんじゃねえの」

 セシルの言葉に対し、エドワードは口角を引くつかせた。

 王族に対し、遠慮のない言葉を吐いても問題視されないのは、アクロイド侯爵家の権力が大きい。

 その相手が国王や王妃、第一王子であったのならば問題になったかもしれないが、第三王子のエドワードの機嫌を損ねるくらいは、何も問題は起きていないと処理される。それほどの権力をアクロイド侯爵家は握っていた。
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