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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る
02-12.
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「剣術がダメなら、魔法ならいいよね」
セシルの言葉を聞き、デズモンドはため息を零した。
それから参ったというかのように両手を挙げた。
「……わかった」
デズモンドはすんなりとセシルの意見を聞き入れた。
元々、デズモンドが決めてきた婚約だ。
それに対しての反抗ではなく、辺境で生きていく為の手段を身に付けたいというものならば、デズモンドが反対をするわけにはいかない。
「自衛の策を覚えるのには賛成しよう。万が一にも備え、攻撃手段を習得しておくのも必要だ。魔塔の魔法使いにはセシルの教育に力を入れるように、言い聞かせておこう」
辺境は危険に晒されることが多い。
デズモンドにとって王国の損にならなければ、辺境がどのような目に遭っていたとしても興味はない。
しかし、セシルが被害を受けることだけは食い止めたかった。
自分の身を守れるようになるのは、大事なことだ。
生きてさえいれば、危険な状況になっていることを言い訳として、強引にセシルを首都に連れて帰ることもできるだろう。
デズモンドがそこまで考えた末、セシルの提案を受け入れたことには気づかず、セシルはデズモンドが受け入れていたことを純粋に喜んでいた。
「なにをおっしゃっておりますの? セシルには攻撃手段など必要ありませんわ。そのような備えをしなければならないようなところになど、かわいいセシルを差し出せるものですか!」
アリシアの意見は変わらなかった。
それどころか、危険な地帯にセシルを渡せないと声を荒げる。
「辺境伯を納得させてくださいませ」
アリシアはセシルを宝物のように抱きしめる。
「セシルと婚約を白紙に戻してくださるようにお伝えてくださいませ」
アリシアの言葉を聞き、セシルは覚悟を決めたように目を閉じた。
……お母様。ごめんなさい。
心の中で謝る。
そして、両腕を使ってアリシアの両肩を全力で押した。
いつもならば、大人しく抱きしめられているセシルの細やかな犯行に気づき、アリシアは驚きながらも抱きしめるのを止めた。
それから、心配そうな顔でセシルを見つめる。
強く抱きしめていた為、苦しかったのだろうかと心配しているのだろう。
セシルの言葉を聞き、デズモンドはため息を零した。
それから参ったというかのように両手を挙げた。
「……わかった」
デズモンドはすんなりとセシルの意見を聞き入れた。
元々、デズモンドが決めてきた婚約だ。
それに対しての反抗ではなく、辺境で生きていく為の手段を身に付けたいというものならば、デズモンドが反対をするわけにはいかない。
「自衛の策を覚えるのには賛成しよう。万が一にも備え、攻撃手段を習得しておくのも必要だ。魔塔の魔法使いにはセシルの教育に力を入れるように、言い聞かせておこう」
辺境は危険に晒されることが多い。
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しかし、セシルが被害を受けることだけは食い止めたかった。
自分の身を守れるようになるのは、大事なことだ。
生きてさえいれば、危険な状況になっていることを言い訳として、強引にセシルを首都に連れて帰ることもできるだろう。
デズモンドがそこまで考えた末、セシルの提案を受け入れたことには気づかず、セシルはデズモンドが受け入れていたことを純粋に喜んでいた。
「なにをおっしゃっておりますの? セシルには攻撃手段など必要ありませんわ。そのような備えをしなければならないようなところになど、かわいいセシルを差し出せるものですか!」
アリシアの意見は変わらなかった。
それどころか、危険な地帯にセシルを渡せないと声を荒げる。
「辺境伯を納得させてくださいませ」
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「セシルと婚約を白紙に戻してくださるようにお伝えてくださいませ」
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……お母様。ごめんなさい。
心の中で謝る。
そして、両腕を使ってアリシアの両肩を全力で押した。
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それから、心配そうな顔でセシルを見つめる。
強く抱きしめていた為、苦しかったのだろうかと心配しているのだろう。
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