『悪役令息』セシル・アクロイドは幼馴染と恋がしたい

佐倉海斗

文字の大きさ
上 下
16 / 42
第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る

02-12.

しおりを挟む
「剣術がダメなら、魔法ならいいよね」

 セシルの言葉を聞き、デズモンドはため息を零した。

 それから参ったというかのように両手を挙げた。

「……わかった」

 デズモンドはすんなりとセシルの意見を聞き入れた。

 元々、デズモンドが決めてきた婚約だ。

 それに対しての反抗ではなく、辺境で生きていく為の手段を身に付けたいというものならば、デズモンドが反対をするわけにはいかない。

「自衛の策を覚えるのには賛成しよう。万が一にも備え、攻撃手段を習得しておくのも必要だ。魔塔の魔法使いにはセシルの教育に力を入れるように、言い聞かせておこう」

 辺境は危険に晒されることが多い。

 デズモンドにとって王国の損にならなければ、辺境がどのような目に遭っていたとしても興味はない。

 しかし、セシルが被害を受けることだけは食い止めたかった。

 自分の身を守れるようになるのは、大事なことだ。

 生きてさえいれば、危険な状況になっていることを言い訳として、強引にセシルを首都に連れて帰ることもできるだろう。

 デズモンドがそこまで考えた末、セシルの提案を受け入れたことには気づかず、セシルはデズモンドが受け入れていたことを純粋に喜んでいた。

「なにをおっしゃっておりますの? セシルには攻撃手段など必要ありませんわ。そのような備えをしなければならないようなところになど、かわいいセシルを差し出せるものですか!」

 アリシアの意見は変わらなかった。

 それどころか、危険な地帯にセシルを渡せないと声を荒げる。

「辺境伯を納得させてくださいませ」

 アリシアはセシルを宝物のように抱きしめる。

「セシルと婚約を白紙に戻してくださるようにお伝えてくださいませ」

 アリシアの言葉を聞き、セシルは覚悟を決めたように目を閉じた。

 ……お母様。ごめんなさい。

 心の中で謝る。

 そして、両腕を使ってアリシアの両肩を全力で押した。

 いつもならば、大人しく抱きしめられているセシルの細やかな犯行に気づき、アリシアは驚きながらも抱きしめるのを止めた。

 それから、心配そうな顔でセシルを見つめる。

 強く抱きしめていた為、苦しかったのだろうかと心配しているのだろう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

バッドエンドの異世界に悪役転生した僕は、全力でハッピーエンドを目指します!

BL
 16才の初川終(はつかわ しゅう)は先天性の心臓の病気だった。一縷の望みで、成功率が低い手術に挑む終だったが……。    僕は気付くと両親の泣いている風景を空から眺めていた。それから、遠くで光り輝くなにかにすごい力で引き寄せられて。    目覚めれば、そこは子どもの頃に毎日読んでいた大好きなファンタジー小説の世界だったんだ。でも、僕は呪いの悪役の10才の公爵三男エディに転生しちゃったみたい!  しかも、この世界ってバッドエンドじゃなかったっけ?  バッドエンドをハッピーエンドにする為に、僕は頑張る!  でも、本の世界と少しずつ変わってきた異世界は……ひみつが多くて?  嫌われ悪役の子どもが、愛されに変わる物語。ほのぼの日常が多いです。 ◎体格差、年の差カップル ※てんぱる様の表紙をお借りしました。

乙女ゲームに転生したらチートだったけど平凡に生きたいのでとりあえず悪役令息付きの世話役になってみました。

ぽぽ
BL
転生したと思ったら乙女ゲーム?! しかも俺は公式キャラじゃないと思ってたのにチートだった為に悪役令息に仕えることに!!!!!! 可愛い彼のために全身全霊善処します!……とか思ってたらなんかこれ展開が…BLゲームかッッ??! 表紙はフレドリックです! Twitterやってますm(*_ _)m あおば (@aoba_bl)

婚約破棄された僕は過保護な王太子殿下とドS級冒険者に溺愛されながら召喚士としての新しい人生を歩みます

八神紫音
BL
「嫌ですわ、こんななよなよした男が夫になるなんて。お父様、わたくしこの男とは婚約破棄致しますわ」  ハプソン男爵家の養子である僕、ルカは、エトワール伯爵家のアンネリーゼお嬢様から婚約破棄を言い渡される。更に自分の屋敷に戻った僕に待っていたのは、ハプソン家からの追放だった。  でも、何もかもから捨てられてしまったと言う事は、自由になったと言うこと。僕、解放されたんだ!  一旦かつて育った孤児院に戻ってゆっくり考える事にするのだけれど、その孤児院で王太子殿下から僕の本当の出生を聞かされて、ドSなS級冒険者を護衛に付けて、僕は城下町を旅立った。

モラトリアムは物書きライフを満喫します。

星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息 就職に失敗。 アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。 自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。 あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。 30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。 しかし……待てよ。 悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!? ☆ ※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。 ※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。

ギャルゲー主人公に狙われてます

白兪
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。 自分の役割は主人公の親友ポジ ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

処理中です...