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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る
02-7.
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「わたくしに相談もせず、話を決めるなんて非道なことをなさるからです」
母親、アリシア・アクロイドは怒っていた。
セシルを目に入れても痛くないほどにかわいがり、厄介な社交界には出席をさせることさえも拒み続けてきたアリシアは、セシルを辺境に送り込むなど考えたくもなかったのだろう。
「ハヴィランドは首都からも遠い土地でしょう。ロザリア王国からの刺客も多い土地ですわ。なによりも、あんなに荒れ果てた田舎に、かわいいセシルを受け渡すなんてありえませんわ」
ハヴィランドは国境を守る重要拠点である。
アリシアもそのことを理解している。
しかし、首都での生活に慣れているセシルが苦労することになるのは、目に見えていた。
「わかっている。わかっているんだ。アリシア。君の言うことは正しい」
父親、デズモンド・アクロイドは、アリシアの意見に同意をした。
セシルの婚約を決めたのは、宰相として正しい選択だっただろう。
リリス王国を守る為には、ハヴィランド辺境伯爵を手中に収める必要がある。常に監視をする為には、結婚の約束が手っ取り早い手段であり、ハヴィランド側もそれに同意をしていた。
「だが、セシルの為にも悪くはない話だろう?」
デズモンドの言葉を聞き、アリシアは首を左右に振った。
「いいえ。悪い話の間違いでしょう。セシルには王家から婿養子をもらうべきだと、わたくし、何度もお伝えいたしましたわ」
「それはわかっている。だが、辺境の安定が重要なのもわかってくれるだろう?」
「ええ、ええ。よくわかっておりますとも。それはセシルである必要がないということも、わたくし、知っておりますのよ」
アリシアは同意をしない。
婚約の話を覆すのは不可能だとわかっている。
しかし、どうしても諦められなかった。
……お母様はどうして怒っているんだろう。
セシルには、よくわからなかった。
……ルシアンと一緒にいられるのに。
セシルにとっての唯一の友はルシアンだ。
ルシアン以外にも交流をしている相手はいるものの、それはお世辞にも仲が良いとは言えない。
顔を見合せば口喧嘩が始まり、酷い時には互いに殴り合うような間柄だ。
母親、アリシア・アクロイドは怒っていた。
セシルを目に入れても痛くないほどにかわいがり、厄介な社交界には出席をさせることさえも拒み続けてきたアリシアは、セシルを辺境に送り込むなど考えたくもなかったのだろう。
「ハヴィランドは首都からも遠い土地でしょう。ロザリア王国からの刺客も多い土地ですわ。なによりも、あんなに荒れ果てた田舎に、かわいいセシルを受け渡すなんてありえませんわ」
ハヴィランドは国境を守る重要拠点である。
アリシアもそのことを理解している。
しかし、首都での生活に慣れているセシルが苦労することになるのは、目に見えていた。
「わかっている。わかっているんだ。アリシア。君の言うことは正しい」
父親、デズモンド・アクロイドは、アリシアの意見に同意をした。
セシルの婚約を決めたのは、宰相として正しい選択だっただろう。
リリス王国を守る為には、ハヴィランド辺境伯爵を手中に収める必要がある。常に監視をする為には、結婚の約束が手っ取り早い手段であり、ハヴィランド側もそれに同意をしていた。
「だが、セシルの為にも悪くはない話だろう?」
デズモンドの言葉を聞き、アリシアは首を左右に振った。
「いいえ。悪い話の間違いでしょう。セシルには王家から婿養子をもらうべきだと、わたくし、何度もお伝えいたしましたわ」
「それはわかっている。だが、辺境の安定が重要なのもわかってくれるだろう?」
「ええ、ええ。よくわかっておりますとも。それはセシルである必要がないということも、わたくし、知っておりますのよ」
アリシアは同意をしない。
婚約の話を覆すのは不可能だとわかっている。
しかし、どうしても諦められなかった。
……お母様はどうして怒っているんだろう。
セシルには、よくわからなかった。
……ルシアンと一緒にいられるのに。
セシルにとっての唯一の友はルシアンだ。
ルシアン以外にも交流をしている相手はいるものの、それはお世辞にも仲が良いとは言えない。
顔を見合せば口喧嘩が始まり、酷い時には互いに殴り合うような間柄だ。
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