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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る

02-5.

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 ……俺だって、よくわからないけど。

 どうして不快なのか。セシルもわからない。

 しかし、ルシアンの言葉を遮ってしまった以上、言葉を続けなければいけない。

 そうしなければ、セシルの機嫌を損ねてしまったとルシアンは落ち込み、あまり話しかけないようにしようとするかもしれない。

「起きてもいないことを悩んでも仕方がないだろ」

 セシルはルシアンの秘密を否定はしない。

 しかし、それに頭を抱えるほどの価値もないと断言する。

「俺はルシアンが気に入っているから、ルシアンと一緒にいたい。ルシアンも俺が好きだから、俺と一緒にいたい。それを諦める必要もないし、罪悪感なんて抱える必要もないだろ」

 セシルは頬杖をつくのを止める。

 それから、迷うことなくルシアンの顔に手を伸ばした。

「ルシアンの秘密は共有してやる。でも、俺は理解なんてできないからな」

 難しいことは考えない。

 わからないのならば、セシルは自分の心に従うだけだ。

「それで? 結局、ルシアンの秘密ってなんだよ? 長々と語ってくれたけど、話のほとんど理解ができてないんだ」

 セシルはルシアンの頬を指で軽く触る。

 同い年のはずなのにもかかわらず、ルシアンの頬はセシルよりも柔らかくない。自分の頬を触るのとは違う肌触りだった。

「……そうだね」

 ルシアンは抱えてきた秘密を声に出したことにより、頭の中身が整理できたのだろう。セシルに頬を触られたまま、軽く目を閉じた。

「僕は転生者なんだけど」

「それ、聞いたぞ。また最初に戻るのか?」

「戻らないよ。セシルにわかるように言い直そうとしているだけだよ」

 ルシアンの言葉を聞き、セシルはそれならいいと言いたげな顔をした。

「セシルの運命の人ではないんだけど」

 ルシアンはゆっくりと目を開ける。

 覚悟を決めたかのような真剣な眼差しを向けられ、セシルは息を飲んだ。

「でも、セシルの一番になりたい」

 ルシアンの言葉に思わず口にしそうになった言葉を飲み込む。

 ……一番だろって、言ったらいけない空気だ。

 セシルは頭があまりよくはない。難しいことを考えないからかもしれない。

 しかし、口を挟んでもいいか、悪いのか、くらいは区別がつく。
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