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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る

02-3.

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「僕は転生者なんだ。前世は日本人の大学生で、BLゲームが好きだった。どうして死んだのか、よく覚えていないけど。でも、好きなBLゲームの世界に転生できたことだけは確かなんだよ」

 ルシアンが打ち明けた秘密の大半を、セシルは理解できなかった。

 首を傾げたまま、静かにルシアンの秘密に耳を傾ける。

 ……何語?

 王国の共用語ではない言葉を聞いた気分だった。

「本当のルシアンは僕が転生したことでいなくなってしまった。それは、悪いことをしたと思っているけど、僕が転生先を決めたわけではないし、ルシアンとして生きていくから、それでいいかなとは思っているんだけど」

 前世の記憶を取り戻した以降、ルシアンは思い悩んできたのだろう。

 ……ルシアンがたくさん話しているの初めて見た。

 セシルは別のことを考えていた。

 秘密を聞くとは決めたものの、まったくなにを話しているのか、理解ができない。

 ところどころ、聞き慣れない言葉が紛れている為なのか。外国語を聞いている気分になってきた。

「でも、セシルに会って、変わってしまったんだよ」

 ルシアンの言葉を聞き、セシルは瞬きをする。

 ……俺?

 ルシアンが思い詰めてきた内容には、あまり興味がなかった。

 セシルができるようなことはないだろうと一方的に決めつけ、セシルが関わるような悩みでもないのだろうと思い込んでいたからだ。

 秘密を共有するだけで気分が楽になればいいと、思っていただけだった。

「前世での最推しが目の前にいるのに、原作沿いに話を進めるなんて、僕にはできなくて。名前だけのモブの僕が、悪役令息のセシルに関わるなんて許されないかもしれないけど。でも、我慢なんてできなかった」

 ルシアンの言葉を聞き、セシルは開きかけた口を閉じた。

 ……まったく、わからない。

 理解もできていないのに話を遮らない方がいいだろう。

 セシルがそう判断したことにも気づけないほどに、ルシアンは興奮していた。

「それにね。セシルと仲良くなって、僕は、ようやくわかったんだ。ここはBLゲームの世界だけど、僕たちはちゃんと生きていて。ゲームの世界であって、ゲームじゃないんだって」

 ルシアンは秘密を打ち明けることで興奮しているのだろうか。

 いつもとは比べ物にならないほどに早口で話し続ける。
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