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第1話 10歳の悪役令息、幼馴染の秘密を知る

01-4.

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「本気なの?」

 ルシアンはセシルに視線を向けた。

 セシルの言葉を疑っているわけではない。

 ただ、セシルの純粋な好意を向けられるべき相手は自分ではないと思っているかのようだった。

「本当に僕でいいの?」

 ルシアンの問いかけに対し、セシルは素直に頷いた。

「本当に決まってるだろ! だって、俺、ルシアンのことを気に入ってるし!」

 疑われたと思っているのだろう。

 セシルは頬を膨らませ、拗ねる。

 それに対し、ルシアンは複雑そうな顔をしていた。

「……セシル」

「なんだよ。まだ俺の言葉を疑うわけ?」

 セシルは拗ねているのだと主張するように顔を逸らした。

「違うよ」

 それに対し、ルシアンは謝ることはしない。

 セシルがどのように接してほしいのかわかっているかのような振る舞いをしようとして、思いとどまった。

 真剣な眼差しでルシアンはセシルを見つめる。

 覚悟を決めたかのような顔をしている。

 ……なんだろう。

 セシルもそれには違和感を抱いた。

 ……ルシアンじゃないみたい。

 セシルにとって、ルシアンは唯一無二の理解者だ。家族に溺愛されていながらも、セシルが抱いていた寂しさに気づき、セシルが望んでいたことを叶えるように最初から対等であるかのように接してきた。

 身分差を理解している。

 しかし、国境付近を守り、王国に多大な貢献をし続けている辺境伯爵家と侯爵家では、それほどに大きい身分差はない。

 子どものうちは、対等に接しても罰せられることはないだろう。

 大人になっても、本人同士が納得しているのならば、許される距離感だ。

 ……いつものルシアンじゃない。

 セシルは友人がほしかった。

 対等に接してほしかった。

 ルシアンはセシルにとって、都合のいい友人を演じていたのだと、セシルは理解してしまう。それは胸が裂けるのではないかというほどに辛いものだった。
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