30 / 30
第1話 犬猿の仲の婚約者
03-12.
しおりを挟む
「結婚しようか。責任を取らなければいけないからな」
「なんだよ。嫌そうな顔をすると思ったのに! ずいぶんと、乗り気じゃないか!」
「当然だな。俺は二年前から結婚の打診をしていた」
ロイの言葉に対し、アストラは首を傾げた。そんな話は聞いたこともなかった。
「お父様はなにも言ってなかったが?」
アストラは結婚の妨害にあっていたと知らなかった。
一部ではアストラのことをブラッドランスの宝と呼び、手に入れたがる人たちがいる。
一目でいいから見てみたいと欲を露わにする貴族を相手に商売をする父親は、アストラを大公家に嫁に出したくなかった。
それは商品としてではなく、アストラを溺愛する父親としての感情によるものだった。
「アストラを商品にするつもりだからだ」
ロイは言い切った。
それが間違いだと知りながら、ブラッドランス侯爵家の悪い噂を利用する。
「公爵はアストラを見世物にするつもりだ」
ロイはアストラが言い返せないことを良いことに、アストラに優しく言い聞かせる。
「アストラ。俺の嫁になれ。そうすれば、俺が守れる」
ロイの力強い言葉にアストラは頷いてしまった。
……お父様のことを誤解しているんだろうな。
父親の性格はアストラはよく知っている。
一族の美貌を商品のように扱い、貴族の欲をたくみに操っているものの、自身の妻や子どもを利用することはほとんどない。利用したとしても政略結婚の駒としてだ。
アストラが大公家に嫁ぐことが決まった時もそうだった。
父親はアストラではなく、姉を選ばせるつもりだった。
しかし、運の悪いことに執務室に遊びに来てしまったアストラが選ばれてしまった。それに関しては今でも酒が入ると、そんなつもりじゃなかったと愚痴を零すほどである。
だから、アストラは父親に利用されているとは思わない。
「守られてやるほどに弱くないけど」
アストラは実力者だ。それを否定させるわけにはいかない。
辺境を守る大公家でも生きていけるほどの実力を身に付けてきた。
「なんだよ。嫌そうな顔をすると思ったのに! ずいぶんと、乗り気じゃないか!」
「当然だな。俺は二年前から結婚の打診をしていた」
ロイの言葉に対し、アストラは首を傾げた。そんな話は聞いたこともなかった。
「お父様はなにも言ってなかったが?」
アストラは結婚の妨害にあっていたと知らなかった。
一部ではアストラのことをブラッドランスの宝と呼び、手に入れたがる人たちがいる。
一目でいいから見てみたいと欲を露わにする貴族を相手に商売をする父親は、アストラを大公家に嫁に出したくなかった。
それは商品としてではなく、アストラを溺愛する父親としての感情によるものだった。
「アストラを商品にするつもりだからだ」
ロイは言い切った。
それが間違いだと知りながら、ブラッドランス侯爵家の悪い噂を利用する。
「公爵はアストラを見世物にするつもりだ」
ロイはアストラが言い返せないことを良いことに、アストラに優しく言い聞かせる。
「アストラ。俺の嫁になれ。そうすれば、俺が守れる」
ロイの力強い言葉にアストラは頷いてしまった。
……お父様のことを誤解しているんだろうな。
父親の性格はアストラはよく知っている。
一族の美貌を商品のように扱い、貴族の欲をたくみに操っているものの、自身の妻や子どもを利用することはほとんどない。利用したとしても政略結婚の駒としてだ。
アストラが大公家に嫁ぐことが決まった時もそうだった。
父親はアストラではなく、姉を選ばせるつもりだった。
しかし、運の悪いことに執務室に遊びに来てしまったアストラが選ばれてしまった。それに関しては今でも酒が入ると、そんなつもりじゃなかったと愚痴を零すほどである。
だから、アストラは父親に利用されているとは思わない。
「守られてやるほどに弱くないけど」
アストラは実力者だ。それを否定させるわけにはいかない。
辺境を守る大公家でも生きていけるほどの実力を身に付けてきた。
63
お気に入りに追加
185
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません
りまり
BL
公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。
自由とは名ばかりの放置子だ。
兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。
色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。
それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。
隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ムーンライトノベルズ にも掲載中です。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
嵌められた悪役令息の行く末は、
珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】
公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。
一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。
「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。
帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。
【タンザナイト王国編】完結
【アレクサンドライト帝国編】完結
【精霊使い編】連載中
※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

王太子殿下は悪役令息のいいなり
白兪
BL
「王太子殿下は公爵令息に誑かされている」
そんな噂が立ち出したのはいつからだろう。
しかし、当の王太子は噂など気にせず公爵令息を溺愛していて…!?
スパダリ王太子とまったり令息が周囲の勘違いを自然と解いていきながら、甘々な日々を送る話です。
ハッピーエンドが大好きな私が気ままに書きます。最後まで応援していただけると嬉しいです。
書き終わっているので完結保証です。

モラトリアムは物書きライフを満喫します。
星坂 蓮夜
BL
本来のゲームでは冒頭で死亡する予定の大賢者✕元39歳コンビニアルバイトの美少年悪役令息
就職に失敗。
アルバイトしながら文字書きしていたら、気づいたら39歳だった。
自他共に認めるデブのキモオタ男の俺が目を覚ますと、鏡には美少年が映っていた。
あ、そういやトラックに跳ねられた気がする。
30年前のドット絵ゲームの固有グラなしのモブ敵、悪役貴族の息子ヴァニタス・アッシュフィールドに転生した俺。
しかし……待てよ。
悪役令息ということは、倒されるまでのモラトリアムの間は貧困とか経済的な問題とか考えずに思う存分文字書きライフを送れるのでは!?
☆
※この作品は一度中断・削除した作品ですが、再投稿して再び連載を開始します。
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、Fujossyでも公開しています。

悪役令息の死ぬ前に
やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる