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第1話 犬猿の仲の婚約者
03-12.
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「結婚しようか。責任を取らなければいけないからな」
「なんだよ。嫌そうな顔をすると思ったのに! ずいぶんと、乗り気じゃないか!」
「当然だな。俺は二年前から結婚の打診をしていた」
ロイの言葉に対し、アストラは首を傾げた。そんな話は聞いたこともなかった。
「お父様はなにも言ってなかったが?」
アストラは結婚の妨害にあっていたと知らなかった。
一部ではアストラのことをブラッドランスの宝と呼び、手に入れたがる人たちがいる。
一目でいいから見てみたいと欲を露わにする貴族を相手に商売をする父親は、アストラを大公家に嫁に出したくなかった。
それは商品としてではなく、アストラを溺愛する父親としての感情によるものだった。
「アストラを商品にするつもりだからだ」
ロイは言い切った。
それが間違いだと知りながら、ブラッドランス侯爵家の悪い噂を利用する。
「公爵はアストラを見世物にするつもりだ」
ロイはアストラが言い返せないことを良いことに、アストラに優しく言い聞かせる。
「アストラ。俺の嫁になれ。そうすれば、俺が守れる」
ロイの力強い言葉にアストラは頷いてしまった。
……お父様のことを誤解しているんだろうな。
父親の性格はアストラはよく知っている。
一族の美貌を商品のように扱い、貴族の欲をたくみに操っているものの、自身の妻や子どもを利用することはほとんどない。利用したとしても政略結婚の駒としてだ。
アストラが大公家に嫁ぐことが決まった時もそうだった。
父親はアストラではなく、姉を選ばせるつもりだった。
しかし、運の悪いことに執務室に遊びに来てしまったアストラが選ばれてしまった。それに関しては今でも酒が入ると、そんなつもりじゃなかったと愚痴を零すほどである。
だから、アストラは父親に利用されているとは思わない。
「守られてやるほどに弱くないけど」
アストラは実力者だ。それを否定させるわけにはいかない。
辺境を守る大公家でも生きていけるほどの実力を身に付けてきた。
「なんだよ。嫌そうな顔をすると思ったのに! ずいぶんと、乗り気じゃないか!」
「当然だな。俺は二年前から結婚の打診をしていた」
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「お父様はなにも言ってなかったが?」
アストラは結婚の妨害にあっていたと知らなかった。
一部ではアストラのことをブラッドランスの宝と呼び、手に入れたがる人たちがいる。
一目でいいから見てみたいと欲を露わにする貴族を相手に商売をする父親は、アストラを大公家に嫁に出したくなかった。
それは商品としてではなく、アストラを溺愛する父親としての感情によるものだった。
「アストラを商品にするつもりだからだ」
ロイは言い切った。
それが間違いだと知りながら、ブラッドランス侯爵家の悪い噂を利用する。
「公爵はアストラを見世物にするつもりだ」
ロイはアストラが言い返せないことを良いことに、アストラに優しく言い聞かせる。
「アストラ。俺の嫁になれ。そうすれば、俺が守れる」
ロイの力強い言葉にアストラは頷いてしまった。
……お父様のことを誤解しているんだろうな。
父親の性格はアストラはよく知っている。
一族の美貌を商品のように扱い、貴族の欲をたくみに操っているものの、自身の妻や子どもを利用することはほとんどない。利用したとしても政略結婚の駒としてだ。
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父親はアストラではなく、姉を選ばせるつもりだった。
しかし、運の悪いことに執務室に遊びに来てしまったアストラが選ばれてしまった。それに関しては今でも酒が入ると、そんなつもりじゃなかったと愚痴を零すほどである。
だから、アストラは父親に利用されているとは思わない。
「守られてやるほどに弱くないけど」
アストラは実力者だ。それを否定させるわけにはいかない。
辺境を守る大公家でも生きていけるほどの実力を身に付けてきた。
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