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第1話 犬猿の仲の婚約者
03-4.
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「アレは最高に美味しかったからな。だから、今日はチョコレートが多いのか? ロイは俺が好きなものを集める才能があるな」
「そうだな。いつも、アストラのことを考えているからだろう」
ロイは近くにあったチョコレートケーキを皿に取り、フォークで一口大に切り分ける。それを当然のようにアストラの口元に運んだ。
……美味しい。
シェフの新作だろう。
この日の為に改良を重ねたのに違いない。
アストラはなんの抵抗もなく、口元に運ばれたケーキを食べながら、心の中でケーキを絶賛する。
「アストラ」
「なんだよ」
「お願いだ。俺を一人にしないでくれ」
ロイの言葉に対し、アストラは鼻で笑った。
……悪い気はしない。
乞われるのは慣れている。欲の籠った目を向けられるのも慣れている。慣れなければ、アストラは正気を失っていただろう。
……たまにはいいか。
ロイも疲れているのかもしれない。
疲れている婚約者を癒すのはアストラのやるべきことだ。ブラッドランス一族の魔性の魅力に抵抗をするように反発をし始め、十年目の反抗期を迎えたアストラも大人になる時が来た。
「約束してやる。ずっと、ロイといてやるよ」
アストラはロイの肩に頭を寄せる。
なにも意図はしていない。ただ、そうするべきだと思ったからしただけだ。
「アストラ」
ロイは愛おしそうにアストラを呼ぶ。
「なんだよ」
アストラはそれが妙に照れくさかった。
「愛している」
ロイは愛の言葉を口にした。それから、流れに身を任せるようにアストラの唇に触れるだけの口付けをした。
……これ、好き。
婚約が結ばれてから、なにかとキスをされる機会が増えた。最初は頬や額にされていたが、歳を重ねると唇にされるようになった。
「そうだな。いつも、アストラのことを考えているからだろう」
ロイは近くにあったチョコレートケーキを皿に取り、フォークで一口大に切り分ける。それを当然のようにアストラの口元に運んだ。
……美味しい。
シェフの新作だろう。
この日の為に改良を重ねたのに違いない。
アストラはなんの抵抗もなく、口元に運ばれたケーキを食べながら、心の中でケーキを絶賛する。
「アストラ」
「なんだよ」
「お願いだ。俺を一人にしないでくれ」
ロイの言葉に対し、アストラは鼻で笑った。
……悪い気はしない。
乞われるのは慣れている。欲の籠った目を向けられるのも慣れている。慣れなければ、アストラは正気を失っていただろう。
……たまにはいいか。
ロイも疲れているのかもしれない。
疲れている婚約者を癒すのはアストラのやるべきことだ。ブラッドランス一族の魔性の魅力に抵抗をするように反発をし始め、十年目の反抗期を迎えたアストラも大人になる時が来た。
「約束してやる。ずっと、ロイといてやるよ」
アストラはロイの肩に頭を寄せる。
なにも意図はしていない。ただ、そうするべきだと思ったからしただけだ。
「アストラ」
ロイは愛おしそうにアストラを呼ぶ。
「なんだよ」
アストラはそれが妙に照れくさかった。
「愛している」
ロイは愛の言葉を口にした。それから、流れに身を任せるようにアストラの唇に触れるだけの口付けをした。
……これ、好き。
婚約が結ばれてから、なにかとキスをされる機会が増えた。最初は頬や額にされていたが、歳を重ねると唇にされるようになった。
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