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第1話 犬猿の仲の婚約者
03-3.
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傷一つない綺麗な手だ。
ロイは撫でるようにアストラの手を触る。
「……傷はないな」
ロイは安心をしたようだった。
宝物を扱うような丁寧に触れる。まるで、触れただけで壊れてしまう美術品を扱っているようだった。
……俺は物じゃねえんだけどな。
ブラッドランス侯爵一族の血が濃く流れている者の宿命といっても、過言ではない。
魔性の魅力を持つ彼らは、どのような悪事も皇帝のお気に入りというだけで許されてしまうが、扱いは人ではなく、美術品や所有物だ。
大勢の一族はその扱いに満足を示していた。一族が繁栄するのならば、物扱いでも快く受け入れるという教育が施されてきた結果だった。
「不快だ。物扱いするんじゃねえよ」
しかし、アストラは違った。
それが正しい教育だというかのように、一族の魔性の魅力を使いこなせるように教育を施されてきたものの、それに反発して生きてきた。
それが許されるのは、どのような振る舞いをしても、アストラの容姿が損なわれることはなく、彼の姿を目にした貴族たちが次から次へと虜になってしまうからだ。
何度も誘拐をされかけてきた。
何度も美術品のような扱いを受けてきた。
そのたびに魔法の威力を数倍にして、相手を吹き飛ばして生き残った。
性格も態度も貴族とは思えないほどに悪いのは、相手を油断させる為だ。相手の本性を見破る為にわざとしてきたことが、自然と身についてしまい、いつのまにか、それがアストラらしさを表現する為の方法に変わっていた。
「だから、言っただろ。手荒れなんてすることをしてねえからな」
アストラはロイの手を弾いた。
美術品のように扱われる気はなかった。少なくとも、ロイにだけは人として扱われたかった。
だからこそ、アストラは反発をする。
美術品のように扱われないように、自己主張をする。
家族のようにブラッドランス一族の魅力を利用して生きていくつもりはなく、アストラはロイの婚約者として、大公家の一員になりたかった。
「それならいい。アストラ、チョコレートが気に入っていただろう?」
ロイは話を逸らした。それにアストラは気づかない。
ロイは撫でるようにアストラの手を触る。
「……傷はないな」
ロイは安心をしたようだった。
宝物を扱うような丁寧に触れる。まるで、触れただけで壊れてしまう美術品を扱っているようだった。
……俺は物じゃねえんだけどな。
ブラッドランス侯爵一族の血が濃く流れている者の宿命といっても、過言ではない。
魔性の魅力を持つ彼らは、どのような悪事も皇帝のお気に入りというだけで許されてしまうが、扱いは人ではなく、美術品や所有物だ。
大勢の一族はその扱いに満足を示していた。一族が繁栄するのならば、物扱いでも快く受け入れるという教育が施されてきた結果だった。
「不快だ。物扱いするんじゃねえよ」
しかし、アストラは違った。
それが正しい教育だというかのように、一族の魔性の魅力を使いこなせるように教育を施されてきたものの、それに反発して生きてきた。
それが許されるのは、どのような振る舞いをしても、アストラの容姿が損なわれることはなく、彼の姿を目にした貴族たちが次から次へと虜になってしまうからだ。
何度も誘拐をされかけてきた。
何度も美術品のような扱いを受けてきた。
そのたびに魔法の威力を数倍にして、相手を吹き飛ばして生き残った。
性格も態度も貴族とは思えないほどに悪いのは、相手を油断させる為だ。相手の本性を見破る為にわざとしてきたことが、自然と身についてしまい、いつのまにか、それがアストラらしさを表現する為の方法に変わっていた。
「だから、言っただろ。手荒れなんてすることをしてねえからな」
アストラはロイの手を弾いた。
美術品のように扱われる気はなかった。少なくとも、ロイにだけは人として扱われたかった。
だからこそ、アストラは反発をする。
美術品のように扱われないように、自己主張をする。
家族のようにブラッドランス一族の魅力を利用して生きていくつもりはなく、アストラはロイの婚約者として、大公家の一員になりたかった。
「それならいい。アストラ、チョコレートが気に入っていただろう?」
ロイは話を逸らした。それにアストラは気づかない。
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