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第1話 犬猿の仲の婚約者
02-4.
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そうしなければ、疑い深いアストラに信じてもらえないと知っているからだ。だから、浮気を疑われることをしなければよかったと今になって後悔していた。
「他の人に手を出す必要がない。アストラだけがほしいのだからな」
ロイの言葉に対し、アストラは頷いた。
……それなら、紛らわしい写真を撮られるんじゃねえよ。
アストラに嫉妬させたかったのだろう。ロイがよく使う手だった。アストラの興味をロイにだけ向けさせる為、嫉妬するような行為を繰り返す。
今回ばかりは、本当に浮気かと疑ったが、いつものロイの悪い癖だったようだ。
……下手なことを言うと、新聞社潰されそうだしなぁ。
既に手遅れかもしれない。
アストラはそんなことを考えながら、結論を導き出した。
「……わかった。今回は、免罪だって信じてやる」
「よかった。それなら、婚約破棄の件はなしだな?」
「今回はな。次、浮気をしたら婚約破棄してやるから、覚悟しとけよ」
アストラは引かなかった。
二度と浮気疑惑を記事に取り沙汰されるわけにはいかない。それこそ、婚姻が成立した後は愛人を許すつもりもない。
「婚約破棄なんて物騒な言葉を教えたのは誰だ? アストラ、お前は起きるはずもないことを心配する必要もないんだ」
ロイは淡々とした声で話すものの、明らかにいらだっていた。いつものお茶会ならば、当然のように隣に座るはずなのだが、アストラは頑なに移動をしようとせず、用意されたケーキを食べ始めたからこその焦りだった。
……バカか?
アストラはロイの発言に眉をひそめた。
一方的な婚約破棄を宣言をした目も当てられない悲惨な騒動の場に、アストラはいた。婚約破棄騒動をやらかした元第三王子の同級生として、卒業記念パーティに参加していたのだ。巻き込まれる前に友人たちを引き連れて、その場から脱出していた。
そのことをロイが知らないはずがない。
「バカの始めたくだらない流行のせいで、誰だって知ってる言葉だろうが」
アストラはくだらない流行に乗るつもりはない。
悲劇の始まりのように描かれた婚約破棄から始まる民衆演劇を観に行く気にもなれず、それに熱中する人の気持ちも、アストラには理解できなかった。
婚約は両家を結ぶ契約だ。
「他の人に手を出す必要がない。アストラだけがほしいのだからな」
ロイの言葉に対し、アストラは頷いた。
……それなら、紛らわしい写真を撮られるんじゃねえよ。
アストラに嫉妬させたかったのだろう。ロイがよく使う手だった。アストラの興味をロイにだけ向けさせる為、嫉妬するような行為を繰り返す。
今回ばかりは、本当に浮気かと疑ったが、いつものロイの悪い癖だったようだ。
……下手なことを言うと、新聞社潰されそうだしなぁ。
既に手遅れかもしれない。
アストラはそんなことを考えながら、結論を導き出した。
「……わかった。今回は、免罪だって信じてやる」
「よかった。それなら、婚約破棄の件はなしだな?」
「今回はな。次、浮気をしたら婚約破棄してやるから、覚悟しとけよ」
アストラは引かなかった。
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「婚約破棄なんて物騒な言葉を教えたのは誰だ? アストラ、お前は起きるはずもないことを心配する必要もないんだ」
ロイは淡々とした声で話すものの、明らかにいらだっていた。いつものお茶会ならば、当然のように隣に座るはずなのだが、アストラは頑なに移動をしようとせず、用意されたケーキを食べ始めたからこその焦りだった。
……バカか?
アストラはロイの発言に眉をひそめた。
一方的な婚約破棄を宣言をした目も当てられない悲惨な騒動の場に、アストラはいた。婚約破棄騒動をやらかした元第三王子の同級生として、卒業記念パーティに参加していたのだ。巻き込まれる前に友人たちを引き連れて、その場から脱出していた。
そのことをロイが知らないはずがない。
「バカの始めたくだらない流行のせいで、誰だって知ってる言葉だろうが」
アストラはくだらない流行に乗るつもりはない。
悲劇の始まりのように描かれた婚約破棄から始まる民衆演劇を観に行く気にもなれず、それに熱中する人の気持ちも、アストラには理解できなかった。
婚約は両家を結ぶ契約だ。
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