12 / 30
第1話 犬猿の仲の婚約者
01-9.
しおりを挟む
「そうか。ジェット二世を預ける。丁重に世話をしろ」
「かしこまりました。アストラ様はいかがなさいますか?」
「俺はロイのところにいく。あの野郎に事情を説明してもらわねえと気がすまないんでな!」
アストラはジェット二世から降りる。
貴族街を走り抜けたのだ。疲れていることだろう。
「ありがとな。よく休めよ」
アストラはジェット二世のたてがみを撫ぜ、礼を尽くす。相棒の望みを叶えたことを自慢に思っているのか、ジェット二世は声を上げた。
……あの野郎がいるのは、執務室か?
首都にある大公邸の間取りも、大公領にある邸宅の間取りも、アストラはある程度は把握している。幼い頃から頻繁に行き来をしていた為、自然と覚えてしまった。
視線をロイの執務室があるあたりに向ける。
露骨なまでにカーテンが開けられており、一部始終を観察していたらしいロイはアストラに軽く手を振った。
「見てやがったのかよ!」
アストラは反射的に叫ぶ。
手を振り返さない。その代わり、握りしめたままだった新聞を地面に叩きつけたい衝動に駆られたが、なんとか堪える。
「性悪男が」
アストラが手にしているのはロイの浮気疑惑の証拠だ。
これがあれば、いつものように嫌がらせの作り話だと軽く流されることはないはずだ。
……誘い出されたようで気分が悪い。
アストラは無言で歩き出す。
その様子を嫉妬で燃え尽きそうな目で見つめていたメイドがいるのは、知っていたが、アストラは気にもしない。
そもそも、アストラの問いかけにすら応えない非常識な人間を相手にする価値を、アストラにはわからなかった。
「かしこまりました。アストラ様はいかがなさいますか?」
「俺はロイのところにいく。あの野郎に事情を説明してもらわねえと気がすまないんでな!」
アストラはジェット二世から降りる。
貴族街を走り抜けたのだ。疲れていることだろう。
「ありがとな。よく休めよ」
アストラはジェット二世のたてがみを撫ぜ、礼を尽くす。相棒の望みを叶えたことを自慢に思っているのか、ジェット二世は声を上げた。
……あの野郎がいるのは、執務室か?
首都にある大公邸の間取りも、大公領にある邸宅の間取りも、アストラはある程度は把握している。幼い頃から頻繁に行き来をしていた為、自然と覚えてしまった。
視線をロイの執務室があるあたりに向ける。
露骨なまでにカーテンが開けられており、一部始終を観察していたらしいロイはアストラに軽く手を振った。
「見てやがったのかよ!」
アストラは反射的に叫ぶ。
手を振り返さない。その代わり、握りしめたままだった新聞を地面に叩きつけたい衝動に駆られたが、なんとか堪える。
「性悪男が」
アストラが手にしているのはロイの浮気疑惑の証拠だ。
これがあれば、いつものように嫌がらせの作り話だと軽く流されることはないはずだ。
……誘い出されたようで気分が悪い。
アストラは無言で歩き出す。
その様子を嫉妬で燃え尽きそうな目で見つめていたメイドがいるのは、知っていたが、アストラは気にもしない。
そもそも、アストラの問いかけにすら応えない非常識な人間を相手にする価値を、アストラにはわからなかった。
111
お気に入りに追加
185
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます
瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。
そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。
そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません
りまり
BL
公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。
自由とは名ばかりの放置子だ。
兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。
色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。
それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。
隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
悪役令息の死ぬ前に
やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
偽りの僕を愛したのは
ぽんた
BL
自分にはもったいないと思えるほどの人と恋人のレイ。
彼はこの国の騎士団長、しかも侯爵家の三男で。
対して自分は親がいない平民。そしてある事情があって彼に隠し事をしていた。
それがバレたら彼のそばには居られなくなってしまう。
隠し事をする自分が卑しくて憎くて仕方ないけれど、彼を愛したからそれを突き通さなければ。
騎士団長✕訳あり平民
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる