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第1話 犬猿の仲の婚約者
01-8.
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それどころか、人形のようなアストラが人間らしい粗雑な振る舞いや、乱暴な言葉遣いをすることにより、ブラッドランス一族が人間であるという当然の事実を再認識させることに一役買っていた。
「お断りします」
バーバラは反抗的だった。
大公家で雇われているとは思えないほどに態度が悪く、アストラの命令に背く。そんな人に遭遇したのは生まれて初めてだった。
「ここは大公邸です。あなたの我儘が通るとでも思っているのですか?」
バーバラは偉そうだった。
……貴族出身か?
貴族の出身の者がメイドや執事になることは珍しくはない。下級貴族の生まれでありながらも、家督を継ぐ身分になれたかった為、専門の学校を卒業して貴族に仕える者は侯爵邸にもいる。
しかし、彼らは身分を弁えるように教育されている。
……行儀見習いとは思えないが。
学校に通うほどの金銭がない場合、縁のある貴族に面倒を見てもらうこともある。それを行儀見習いと呼んでいるのだが、バーバラはそれにも該当しているとは思えない態度を貫いていた。
「大公子様もおかわいそうに。こんなのが婚約者だなんて」
バーバラは同情をするかのような言葉を口にした。
それは禁句だった。
世間では勘違いをされているが、アストラがロイを選んだのではなく、ロイがアストラを婚約者に選んだのである。それなのにもかかわらず、同情されるのはいつもロイだった。
そうすれば、ロイの関心を引けると思った女性の仕業だろう。
アストラはその手口を嫌になるほどに知っていた。
「調子に乗るなよ」
アストラはバーバラを睨みながら、冷たい言葉を口にする。
そのまま、バーバラの心を傷つけるような言葉を口にしようとした時、周囲が騒がしくなり、そちらに気をとられ
てしまった。
「アストラ様! お待たせいたしました。馬小屋にて、ジェット二世様を休憩させる準備が整っております」
駆け寄ってきた大公家の騎士団の制服を着た男性の声に気づき、向きを変える。態度の悪いバーバラを気にかけるほどにアストラは優しくはない。
騒がしくなったのは彼が走っていたからだろう。
そして、同時にバーバラの態度を報告する為にメイドが駆けていた。
「お断りします」
バーバラは反抗的だった。
大公家で雇われているとは思えないほどに態度が悪く、アストラの命令に背く。そんな人に遭遇したのは生まれて初めてだった。
「ここは大公邸です。あなたの我儘が通るとでも思っているのですか?」
バーバラは偉そうだった。
……貴族出身か?
貴族の出身の者がメイドや執事になることは珍しくはない。下級貴族の生まれでありながらも、家督を継ぐ身分になれたかった為、専門の学校を卒業して貴族に仕える者は侯爵邸にもいる。
しかし、彼らは身分を弁えるように教育されている。
……行儀見習いとは思えないが。
学校に通うほどの金銭がない場合、縁のある貴族に面倒を見てもらうこともある。それを行儀見習いと呼んでいるのだが、バーバラはそれにも該当しているとは思えない態度を貫いていた。
「大公子様もおかわいそうに。こんなのが婚約者だなんて」
バーバラは同情をするかのような言葉を口にした。
それは禁句だった。
世間では勘違いをされているが、アストラがロイを選んだのではなく、ロイがアストラを婚約者に選んだのである。それなのにもかかわらず、同情されるのはいつもロイだった。
そうすれば、ロイの関心を引けると思った女性の仕業だろう。
アストラはその手口を嫌になるほどに知っていた。
「調子に乗るなよ」
アストラはバーバラを睨みながら、冷たい言葉を口にする。
そのまま、バーバラの心を傷つけるような言葉を口にしようとした時、周囲が騒がしくなり、そちらに気をとられ
てしまった。
「アストラ様! お待たせいたしました。馬小屋にて、ジェット二世様を休憩させる準備が整っております」
駆け寄ってきた大公家の騎士団の制服を着た男性の声に気づき、向きを変える。態度の悪いバーバラを気にかけるほどにアストラは優しくはない。
騒がしくなったのは彼が走っていたからだろう。
そして、同時にバーバラの態度を報告する為にメイドが駆けていた。
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