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第1話 犬猿の仲の婚約者
01-7.
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以前から首都にある大公邸で働いているメイドだろうか。年齢はアストラとあまり変わらないだろう。
……なんか嫌な感じだ。
根拠のない勘ではあったが、アストラは返事をしないメイドに対して不快感を抱く。
とんでもない来訪の仕方ではあったものの、ロイの婚約者として有名であるアストラの存在を知らないはずがない。それなのにもかかわらず、メイドはアストラのことを知らないかのような顔をしていた。
……殺意? 違う。敵意か。
向けられたことのない害意を感じ、不快感を抱く。
「おい。メイド。聞こえないのか?」
耳の悪いメイドならば、外の仕事を任せないだろう。
適材適所で振り分けられるはずである。
……わざとか?
アストラの美貌に見惚れているわけではなさそうだ。
悪意すら感じる。
……お父様なら解雇してるようなやつでも、大公家は雇うのか。
それは優しさとはいわない。
職務放棄をしている人間を野放しにすれば、あっという間に取り返しのつかないことになる。それがわからない人たちとは思えなかった。
「メイド。――おい、お前。名前は? なにも話せないのか?」
アストラは言い方を変えてみた。
それに対し、メイドは僅かに反応を示した。声が聞こえていないわけではなかったようだ。
「バーバラです」
メイド、バーバラは名乗った。
アストラを敵視しているかのような目つきであり、露骨なまでに態度が悪い。
名を呼ばれるのが当然だと思っているのだろうか。侯爵邸では目にすることのない性格のメイドだった。
「バーバラ。馬小屋はどこにある? 案内をしろ」
アストラはいつも通りに声をかける。
ブラッドランス侯爵家の令息であり、大公子であるロイの婚約者のアストラが偉そうな言葉遣いをしていても、誰も反感を抱かない。
貴族とはそういうものだった。
他人を下に見ることが許される立場にいるのだから、当然のことだ。
……なんか嫌な感じだ。
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「メイド。――おい、お前。名前は? なにも話せないのか?」
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それに対し、メイドは僅かに反応を示した。声が聞こえていないわけではなかったようだ。
「バーバラです」
メイド、バーバラは名乗った。
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「バーバラ。馬小屋はどこにある? 案内をしろ」
アストラはいつも通りに声をかける。
ブラッドランス侯爵家の令息であり、大公子であるロイの婚約者のアストラが偉そうな言葉遣いをしていても、誰も反感を抱かない。
貴族とはそういうものだった。
他人を下に見ることが許される立場にいるのだから、当然のことだ。
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