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第1話 犬猿の仲の婚約者
01-6.
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「あの野郎! もう許してやらねえからな!」
侯爵邸の玄関を飛び出て、一目散に馬小屋に向かう。
アストラの気配を察したのか、任せておけと言わんばかりに愛馬が鳴いていた。
「ジェット二世! あの忌々しい浮気男のいる大公邸に行くぞ!」
「ヒヒーン!!」
「さすがだな! ジェット二世! お前もやる気十分じゃないか!」
アストラは愛馬、ジェット二世に跨る。
慣れた手つきで馬小屋から飛び出したジェット二世は、愛してやまない主人に忠実な馬だ。追いかけてきた使用人たちを跳ね飛ばさないように、回避をしながら、侯爵邸の中庭を爆走する。
目標は同じ首都にある大公邸だ。
距離は5kmほどしか離れていない為、俊足を誇るジェット二世ならば、三十分もせずに到着するだろう。
……あの野郎。
ロイが女性に絡まれるのは初めてではない。
しかし、アストラがここまで激怒するのは初めてだった。
……婚約破棄なんて醜聞、食らってたまるか!
貴族間で婚約破棄に伴う騒動が度々世間を賑わせていた。
原因は、二年前に起きた第三王子による婚約破棄宣言を発端とした一連の騒動にある。
最悪の場合、公爵家が独立して、公国として宣戦布告をしかねない事態にまで発展したとんでもない出来事は、アストラも嫌になるほどに知っている。
第三王子の王位継承権剥奪という判決をもって、最悪の事態は免れたものの、ブラッドランス侯爵家も血の気が引く醜い争いだった。
……婚約破棄されるくらいなら、いっそのこと、俺からしてやる。
アストラは怒りのあまり、状況を冷静に判断できてなかった。
「――アストラ様 !?」
物凄い勢いで馬を走らせるアストラの姿を認識した大公邸の門番は目を見開きながら、声をあげた。それから、大慌てで大公邸の門を開ける。
事前に連絡がいっていたのだろう。
「おい。そこの使用人。ジェット二世を休ませる場所はないか?」
アストラは興奮しているジェット二世を宥めながら、近くにいたメイドに声を掛ける。
……どこかで見た顔だな。
見覚えがあった。
侯爵邸の玄関を飛び出て、一目散に馬小屋に向かう。
アストラの気配を察したのか、任せておけと言わんばかりに愛馬が鳴いていた。
「ジェット二世! あの忌々しい浮気男のいる大公邸に行くぞ!」
「ヒヒーン!!」
「さすがだな! ジェット二世! お前もやる気十分じゃないか!」
アストラは愛馬、ジェット二世に跨る。
慣れた手つきで馬小屋から飛び出したジェット二世は、愛してやまない主人に忠実な馬だ。追いかけてきた使用人たちを跳ね飛ばさないように、回避をしながら、侯爵邸の中庭を爆走する。
目標は同じ首都にある大公邸だ。
距離は5kmほどしか離れていない為、俊足を誇るジェット二世ならば、三十分もせずに到着するだろう。
……あの野郎。
ロイが女性に絡まれるのは初めてではない。
しかし、アストラがここまで激怒するのは初めてだった。
……婚約破棄なんて醜聞、食らってたまるか!
貴族間で婚約破棄に伴う騒動が度々世間を賑わせていた。
原因は、二年前に起きた第三王子による婚約破棄宣言を発端とした一連の騒動にある。
最悪の場合、公爵家が独立して、公国として宣戦布告をしかねない事態にまで発展したとんでもない出来事は、アストラも嫌になるほどに知っている。
第三王子の王位継承権剥奪という判決をもって、最悪の事態は免れたものの、ブラッドランス侯爵家も血の気が引く醜い争いだった。
……婚約破棄されるくらいなら、いっそのこと、俺からしてやる。
アストラは怒りのあまり、状況を冷静に判断できてなかった。
「――アストラ様 !?」
物凄い勢いで馬を走らせるアストラの姿を認識した大公邸の門番は目を見開きながら、声をあげた。それから、大慌てで大公邸の門を開ける。
事前に連絡がいっていたのだろう。
「おい。そこの使用人。ジェット二世を休ませる場所はないか?」
アストラは興奮しているジェット二世を宥めながら、近くにいたメイドに声を掛ける。
……どこかで見た顔だな。
見覚えがあった。
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