婚約破棄を覚悟した悪役令息のはずが、犬猿の仲の婚約者に執着されて幸せになる

佐倉海斗

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第1話 犬猿の仲の婚約者

01-5.

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 ……頼めば許可をくれるだろうし。

 両親や兄姉はアストラを溺愛している。

 アストラよりも十歳下の双子の弟たちからも、母親が違うとは思えないほどに懐かれており、アストラが侯爵邸を出立する時には大泣きをされることだろう。

 そんな家族がアストラの願いを断るとは思えなかった。

「それより、あの忌々しい新聞は持ってきてくれたか?」

 アストラは新聞を読む日課があった。

 それは世間の噂に興味があるわけでも、世界情勢に関心があるわけでもない。

「お持ちいたしましたが……」

 ローザは本当に読むのかと言いたげな顔をした。

 まともな記事を出したことがないとさえ言われている新聞だ。

 いくつかある新聞社の中でも、常識外れの連中であり、彼らが出版する新聞や号外の大半は皇族や貴族に関する酷い噂話ばかりである。

 ローザがアストラに差し出すのを戸惑うのも当然である。

「その顔はアレだろ。また、ロイの顔面詐欺野郎がなんかしたんだな」

「御名答でございます。今回ばかりは旦那様も呆れていらっしゃいましたよ」

 ローザは持参した籠の中から新聞を取り出した。

 大きな見出しとそれに関係する内容、盗み撮りしたのであろう写真が載っているだけの簡易的なものだ。

 不定期に発行されるゴシップ記事に目を通す。

 ローザの言葉通り、内容はロイが愛人と思われる女性と親しげに宝石店に入っていったというものだった。

「あの野郎! また浮気しやがったな!」

 アストラは新聞を握りしめた。

 怒りが爆発をした。なにより、今回は証拠を手に入れたのだ。

 写真付きの新聞を前に嘘を吐くことはしないだろう。

「坊っちゃま!?」

 ローザの驚いた声に返事もせず、アストラは怒りに身を任せて部屋から飛び出していく。

 大慌てでアストラを追いかけるローザの足音で、騒ぎに気づいた使用人たちは慌てて仕事を放りだして飛び出してきた。

「退け! 邪魔するなら突き飛ばすぞ!」

 アストラは妨害しようとする使用人に忠告をするように声を荒げた。そうすれば、使用人たちはアストラの後を追いかけるだけで、アストラの進路を妨害しようとはしない。
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