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第1話 犬猿の仲の婚約者
01-4.
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「アストラ坊ちゃま。ローザは心配でなりません」
ローザはアストラの服を準備しながら、心の底から心配しているとわかるような声で言った。
「は? なにがだよ。婚約者に会いに行ってやるだけだろ。ローザは俺を子どもだと思ってんのか?」
アストラは不快そうに反論する。
心配されたのが不快だったわけではなく、心配性で過保護なところのあるローザに、二十歳になっても心配をかけているつもりはなかったからだ。
なにより、子ども扱いをされて喜ぶ年齢ではなかった。
「いいえ。アストラ坊っちゃまは成人を迎えたばかりでしょう」
「そうだが?」
「大公子が坊ちゃまになにをするつもりかと、考えるだけでローザは気が遠くなりそうなのです。大公子は女性関係に問題があると噂を放置していらっしゃいますから……」
ローザの言葉に対し、アストラは反論ができなかった。
噂を真に受けたわけではない。しかし、度々、女性関係が噂されているのは事実だ。
「坊っちゃま。大公領に嫁がれる時には、このローザにお供させてくださいませ」
「それはお父様に言えよ。俺はローザにいてほしいけど、俺に決定権はねえんだから」
「坊っちゃまが望んでくださるのならば、旦那様はお許しになるかと思いますよ」
ローザは慣れた手つきでアストラの着替えを手伝いながら、穏やかに笑った。
……たしかに。ローザがいたら、助かるな。
心強い味方がいれば大公家に嫁いでからも、精神的な負担が減るだろう。
……ロイの変態野郎がなにかした時の相談役はほしいな。
大公領に嫁いだ後のことを考える。
結婚式は大公夫妻の強い意向により、アストラが大公領の環境に慣れた頃、大公領にて盛大に執り行われることになっている。
だが、結婚の儀式は書類に名を書くだけの簡易的な方法にすると連絡があった。こちらはロイの意向によるものだと聞いている。
「お父様に頼んでみる。ローザがいれば俺は無敵だからな」
アストラはローザに笑いかけた。
それに対し、ローザは感激の涙を堪えながら、笑い返してみせた。
ローザはアストラの服を準備しながら、心の底から心配しているとわかるような声で言った。
「は? なにがだよ。婚約者に会いに行ってやるだけだろ。ローザは俺を子どもだと思ってんのか?」
アストラは不快そうに反論する。
心配されたのが不快だったわけではなく、心配性で過保護なところのあるローザに、二十歳になっても心配をかけているつもりはなかったからだ。
なにより、子ども扱いをされて喜ぶ年齢ではなかった。
「いいえ。アストラ坊っちゃまは成人を迎えたばかりでしょう」
「そうだが?」
「大公子が坊ちゃまになにをするつもりかと、考えるだけでローザは気が遠くなりそうなのです。大公子は女性関係に問題があると噂を放置していらっしゃいますから……」
ローザの言葉に対し、アストラは反論ができなかった。
噂を真に受けたわけではない。しかし、度々、女性関係が噂されているのは事実だ。
「坊っちゃま。大公領に嫁がれる時には、このローザにお供させてくださいませ」
「それはお父様に言えよ。俺はローザにいてほしいけど、俺に決定権はねえんだから」
「坊っちゃまが望んでくださるのならば、旦那様はお許しになるかと思いますよ」
ローザは慣れた手つきでアストラの着替えを手伝いながら、穏やかに笑った。
……たしかに。ローザがいたら、助かるな。
心強い味方がいれば大公家に嫁いでからも、精神的な負担が減るだろう。
……ロイの変態野郎がなにかした時の相談役はほしいな。
大公領に嫁いだ後のことを考える。
結婚式は大公夫妻の強い意向により、アストラが大公領の環境に慣れた頃、大公領にて盛大に執り行われることになっている。
だが、結婚の儀式は書類に名を書くだけの簡易的な方法にすると連絡があった。こちらはロイの意向によるものだと聞いている。
「お父様に頼んでみる。ローザがいれば俺は無敵だからな」
アストラはローザに笑いかけた。
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