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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている
04-25.
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「なぜ、母上を?」
アルバートはなにも理解できなかった。
ブラッドがアルバートに対して好意を抱いていると見抜いていたのだろう。
だからこそ、社交界で見かけるたびに声をかけていた。
その都度、言い争いになってはいたものの、アルバートはブラッドが自分だけを見てくれているのならば汚い言葉で罵られても平気だった。
「はっ、そんなこともわかんないのかよ」
ブラッドは鼻で笑う。
それから、準備された料理に遠慮なくフォークを刺した。
「公爵夫人のお気に入りになれば、お前との婚約の話がでるかもしれないだろ。だから、わざと夫人の前では従順にしてたんだよ」
「なるほど。母上からかわいらしい子猫のようだと話は聞いている」
「子猫!? この俺を見てそう評価するのは、あの夫人くらいだろ」
ブラッドは野菜を口にした。
……俺の好みの味付けだ。
社交界の場で、餌付けと称して公爵夫人が料理を食べさせてくれたことを思い出す。あれはブラッドの味の好みを探っていたのかもしれない。
公爵も会うたびにブラッドを気にかけてくれた。
それこそ、公爵夫妻は実の両親よりも親らしかった。
「ブラッド」
アルバートはなにを思ったのか、デザートをスプーンですくい、ブラッドに向ける。
「……食べろと?」
ブラッドは嫌そうな顔をした。
料理の順番を気にしているわけではない。社交界の正式な場ならば、ともかく、二人だけの食事だ。多少、食事の決まりを破ったところで注意をする人はいない。
「母上の時は食べたのだろう?」
アルバートに言われるとブラッドは苦い顔をする。
……よけいなことを言ってしまったな。
めんどうなことになった。
……だが、そんな恥ずかしいことができるものか!
公爵夫人を相手にする時も羞恥心を耐えていたのだ。アルバートを相手にそれをするのは、かなり、恥ずかしい。
「ブラッド。食べないのか?」
アルバートはスプーンをブラッドの口元に近づける。
嫌いなものが乗っているわけではない。
アルバートはなにも理解できなかった。
ブラッドがアルバートに対して好意を抱いていると見抜いていたのだろう。
だからこそ、社交界で見かけるたびに声をかけていた。
その都度、言い争いになってはいたものの、アルバートはブラッドが自分だけを見てくれているのならば汚い言葉で罵られても平気だった。
「はっ、そんなこともわかんないのかよ」
ブラッドは鼻で笑う。
それから、準備された料理に遠慮なくフォークを刺した。
「公爵夫人のお気に入りになれば、お前との婚約の話がでるかもしれないだろ。だから、わざと夫人の前では従順にしてたんだよ」
「なるほど。母上からかわいらしい子猫のようだと話は聞いている」
「子猫!? この俺を見てそう評価するのは、あの夫人くらいだろ」
ブラッドは野菜を口にした。
……俺の好みの味付けだ。
社交界の場で、餌付けと称して公爵夫人が料理を食べさせてくれたことを思い出す。あれはブラッドの味の好みを探っていたのかもしれない。
公爵も会うたびにブラッドを気にかけてくれた。
それこそ、公爵夫妻は実の両親よりも親らしかった。
「ブラッド」
アルバートはなにを思ったのか、デザートをスプーンですくい、ブラッドに向ける。
「……食べろと?」
ブラッドは嫌そうな顔をした。
料理の順番を気にしているわけではない。社交界の正式な場ならば、ともかく、二人だけの食事だ。多少、食事の決まりを破ったところで注意をする人はいない。
「母上の時は食べたのだろう?」
アルバートに言われるとブラッドは苦い顔をする。
……よけいなことを言ってしまったな。
めんどうなことになった。
……だが、そんな恥ずかしいことができるものか!
公爵夫人を相手にする時も羞恥心を耐えていたのだ。アルバートを相手にそれをするのは、かなり、恥ずかしい。
「ブラッド。食べないのか?」
アルバートはスプーンをブラッドの口元に近づける。
嫌いなものが乗っているわけではない。
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