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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている
04-19.
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「……いや、別になんでもない」
アルバートはブラッドから視線を逸らした。しかし、あいかわらず、表情が緩んでおり、良いことがあったのだと隠しきれていない。
「なんでもねえ顔じゃねえんだけど」
ブラッドはアルバートに詰め寄る。
顔を逸らされたのは納得ができなかった。
「お前が用意した服を着てやったんだ。感想は? 当然、似合ってるんだから、それ以外の感想を寄越せよ」
ブラッドの言葉を聞き、アルバートは困ったような顔をした。
廊下を掃除しているメイドたちには異様な光景に見えるだろう。
鉄仮面のような主人を煽っている嫁の姿は妙なものだ。それも意気揚々と煽っているのだから、どちらが優位に立っているのか、妙な想像をさせてしまうだろう。
ブラッドはアルバートの僅かな表情の変化を見逃さない。
片思いをしている間、こっそりと見続けてきたからだろうか。それとも、ブラッドを前にするとアルバートの鉄仮面も崩れやすくなるのかもしれない。
「……脱がせたくなる」
アルバートが考え抜いた言葉がそれだった。
「はぁ?」
ブラッドは意味がわからなかった。
ブラッドの為に用意された服を着たというのに、脱がせたくなるとはどういう意味なのか。自画自賛ではあるものの、まるでブラッドが着る為だけに作られたような服であるとさえ思ってしまうほどに似合っているはずである。
だからこそ、それ以外の誉め言葉を求めたつもりが、とんでもない言葉が返された。
「お前の発想は理解できねえわ。けど、アルバートなりの誉め言葉として受け取っておいてやる。さっさと飯を食いに行くぞ」
ブラッドはアルバートの腕を掴み、歩き出す。
「本当にわからないのか?」
「わからねえから言ってんだよ。でも、嫌味じゃねえだろ? アルバートが貴族らしい嫌味の一つや二つ、すぐに思いつかねえのは知ってるからな」
「たしかに。嫌味ではないな」
アルバートはブラッドに腕を掴まれたまま、歩く。
情緒の欠片もない掴まれ方をしているものの、それを否定することはない。それどころか、先ほどまでの機嫌の悪さがどこかにいってしまったかのようなブラッドのことが可愛く思えてしかたがなかった。
アルバートはブラッドから視線を逸らした。しかし、あいかわらず、表情が緩んでおり、良いことがあったのだと隠しきれていない。
「なんでもねえ顔じゃねえんだけど」
ブラッドはアルバートに詰め寄る。
顔を逸らされたのは納得ができなかった。
「お前が用意した服を着てやったんだ。感想は? 当然、似合ってるんだから、それ以外の感想を寄越せよ」
ブラッドの言葉を聞き、アルバートは困ったような顔をした。
廊下を掃除しているメイドたちには異様な光景に見えるだろう。
鉄仮面のような主人を煽っている嫁の姿は妙なものだ。それも意気揚々と煽っているのだから、どちらが優位に立っているのか、妙な想像をさせてしまうだろう。
ブラッドはアルバートの僅かな表情の変化を見逃さない。
片思いをしている間、こっそりと見続けてきたからだろうか。それとも、ブラッドを前にするとアルバートの鉄仮面も崩れやすくなるのかもしれない。
「……脱がせたくなる」
アルバートが考え抜いた言葉がそれだった。
「はぁ?」
ブラッドは意味がわからなかった。
ブラッドの為に用意された服を着たというのに、脱がせたくなるとはどういう意味なのか。自画自賛ではあるものの、まるでブラッドが着る為だけに作られたような服であるとさえ思ってしまうほどに似合っているはずである。
だからこそ、それ以外の誉め言葉を求めたつもりが、とんでもない言葉が返された。
「お前の発想は理解できねえわ。けど、アルバートなりの誉め言葉として受け取っておいてやる。さっさと飯を食いに行くぞ」
ブラッドはアルバートの腕を掴み、歩き出す。
「本当にわからないのか?」
「わからねえから言ってんだよ。でも、嫌味じゃねえだろ? アルバートが貴族らしい嫌味の一つや二つ、すぐに思いつかねえのは知ってるからな」
「たしかに。嫌味ではないな」
アルバートはブラッドに腕を掴まれたまま、歩く。
情緒の欠片もない掴まれ方をしているものの、それを否定することはない。それどころか、先ほどまでの機嫌の悪さがどこかにいってしまったかのようなブラッドのことが可愛く思えてしかたがなかった。
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