悪役令息は犬猿の仲の騎士団長に溺愛される。

佐倉海斗

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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

04-10.

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「悪質なものならば、第三騎士団が取り締まっているはずだが」

 アルバートの出した結論を聞き、ブラッドは再びため息を零した。

 ……極端なんだよ。この真面目野郎。

 心の中で悪態を吐く。

 リリィの身柄は既に執事の手によって取り押さえられている。万が一の逃走を防ぐ為だろう。すぐに連れて行かないのは、ブラッドの妥協案を聞き、アルバートの意思が変わる可能性があるからだろうか。

「社交界でなにをしてたんだよ。この真面目野郎が」

「ブラッドの監視だが」

「ふざけんな。俺が監視されるようなことをしたことねえだろうが!」

 ブラッドはアルバートの腕を引っ張る。

 いつも通りの体調ならば、蹴りの一つでも入れたいところだったが、大きな動きはしたくはなかった。少しでも大きく足を動かすと、昨日、腹の中に出されたアルバートの精液が漏れ出しそうだった。

「耳を貸せ」

 ブラッドの言葉を聞き、アルバートは体を傾ける。

 耳元で囁く必要のある話ではないものの、機嫌が悪いアルバートを慰める方法の一つとして、ブラッドは学生時代からよく使っていた。

「憶測だが。男爵にアルバートの愛人にでもなってこいって、言われたんだと思う」

 下級貴族や爵位の持たない大商人のよく行う手段の一つだ。

 ブラッドも色仕掛けをするように命じられた下級貴族出身の少年少女の姿を、社交界の場で何度も目にしたことがある。伯爵家の次男という立場を利用し、のらりくらりと色仕掛けを交わしていた事実もある。

「でも、大男に色仕掛けなんてしたくねえだろ」

 ブラッドの言葉は皮肉も込められている。

 アルバートは女性から絶大的な人気を誇っている。

 侯爵家の嫡男であり、第二騎士団の団長を任せられているのだ。それなのにもかかわらず、婚約者がいないとなれば、ここぞとばかりに接近しようとする女性は多かった。

 それらに気づいていないのは、アルバートが女性に関心を抱かなかったからである。

「なるほどな」

 アルバートはブラッドの憶測を受け入れた。

 それから視線をリリィに向ける。リリィに向けられた視線は冷たく、侯爵家で雇っている使用人に向けるようなものではなかった。
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