悪役令息は犬猿の仲の騎士団長に溺愛される。

佐倉海斗

文字の大きさ
上 下
65 / 98
第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

04-9.

しおりを挟む
 ……あんまりだ!

 ブラッドは未成年者の責任は親がとるべきだと考えている。もちろん、犯罪行為を犯した者に関しては違う。犯した罪の大きさを考えれば、未成年であったとしても許されないものもあると考えている。

 だからこそ、今回のアルバートの判断は重すぎると考えていた。

 事実として、リリィはアルバートたちの寝室の前に立っていた。それはブラッドが侯爵家の嫁として連れてこられる前から行われていたのだろう。

 しかし、寝室の前に立っていただけである。

 それ以上のことはなにもしていないのだ。

「そんな甘い考えをしているから、王子に付き纏われるんだ」

「ウォルト王子を甘やかしたことなんて一度もない。俺は、王子殿下や王女殿下に対して、平等に王族として適切な対応をしてきたつもりだ」

「そう思っているから問題なんだろうが」

 アルバートの言葉を聞き、ブラッドは眉を顰めた。

 ……あれは違う。

 心の中で否定する。

 ウォルトに対し、好意的に接していたのはキャロラインの婚約者だったからだ。それも王族として当然の扱いをしていただけであり、ウォルトが未だにブラッドのことを慕っているのは想定外だった。

 昨日のウォルトの様子を思い返す。

 あれは異常だった。アルバートがブラッドに向ける執着とも違う。得体のしれない感情を向けられている嫌悪感は、一生、ブラッドに付き纏うだろう。

「……この子に関しては、軟禁程度で許してやってくれないか」

 ブラッドも思うことがあったのだろう。

 なにもせずに開放するように説得することを諦め、妥協案を提示した。

 ……男爵家の悪い噂があったな。

 リリィは男爵家の為に動いていた可能性がある。

 偶然、社交界で耳にした男爵家の悪い噂を思い出したのだ。

「なぜだ?」

「そのくらい、わかってくれよ。男爵家の噂を聞いたことがあるだろ? その関連で調べれば、すぐに黒幕と目的がわかるはずだ」

 ブラッドの言葉を聞き、アルバートは考え込む。

 ……そういえば、社交界嫌いだったか。

 アルバートの社交界嫌いは有名だ。

 ……毎回、出くわすから、ただの噂だと思ってた。

 おそらく、ブラッドが出席をしている場所にだけ参加していたのだろう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

推しの為なら悪役令息になるのは大歓迎です!

こうらい ゆあ
BL
「モブレッド・アテウーマ、貴様との婚約を破棄する!」王太子の宣言で始まった待ちに待った断罪イベント!悪役令息であるモブレッドはこの日を心待ちにしていた。すべては推しである主人公ユレイユの幸せのため!推しの幸せを願い、日夜フラグを必死に回収していくモブレッド。ところが、予想外の展開が待っていて…?

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

処理中です...