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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている
04-8
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「誘惑をしろと命じられたか?」
アルバートは淡々とした声で問いかける。
返答次第では解雇通知書をリリィに叩きつけるつもりだろう。
「あ、の、……えっと」
リリィは助けを求めるようにブラッドに視線を送った。
先ほどまでブラッドはリリィを庇うような言動をしていた。それが、リリィにとっては救いの手に見えたのだろう。
「……もういい」
アルバートには逆効果だった。
廊下を駆けていったアルバートを追いかけてきた数人の執事やメイドたちに視線を向けた。
「拷問部屋に放り込め。誰が黒幕かわかるまで報告はいらない」
アルバートの決断は早かった。
その決断を拒むような執事たちはいない。
いつかアルバートの逆鱗に触れることになるとわかっていたのだろう。リリィがどれほど前からアルバートの寝室の前に立つようになったのか、ブラッドは知らなかったが、使用人たちの中では有名な話だった。
それを誰も咎めなかったわけではない。
それを誰も注意しなかったわけではない。
リリィが聞く耳を持たなかっただけである。
「アルバート!」
それを止めるのはブラッドだけだった。
アルバートの後ろに隠されるようにされたことも不服であったが、それ以上にリリィに対する処罰が不満だった。
「やりすぎだ。こんな子どもにするようなことじゃないだろ!」
ブラッドの言葉に対し、この場にいた執事とメイドたちは心の中で同意していた。
「はぁ」
アルバートはため息を零した。
それから、アルバートの背中に隠れているなど性に合わないと言わんばかりに隣に並んだブラッドの頭を強引に撫でる。
「なにをするんだ!」
そんなことをしている場合ではないだろうと、ブラッドは抗議の声をあげる。
「子どもに甘いのは最大の欠点だ」
「はぁ!? こんな子どもに大人と同じ判断をさせようとするのが間違いだろ!」
ブラッドはありえないと反撃の言葉を口にした。
アルバートは淡々とした声で問いかける。
返答次第では解雇通知書をリリィに叩きつけるつもりだろう。
「あ、の、……えっと」
リリィは助けを求めるようにブラッドに視線を送った。
先ほどまでブラッドはリリィを庇うような言動をしていた。それが、リリィにとっては救いの手に見えたのだろう。
「……もういい」
アルバートには逆効果だった。
廊下を駆けていったアルバートを追いかけてきた数人の執事やメイドたちに視線を向けた。
「拷問部屋に放り込め。誰が黒幕かわかるまで報告はいらない」
アルバートの決断は早かった。
その決断を拒むような執事たちはいない。
いつかアルバートの逆鱗に触れることになるとわかっていたのだろう。リリィがどれほど前からアルバートの寝室の前に立つようになったのか、ブラッドは知らなかったが、使用人たちの中では有名な話だった。
それを誰も咎めなかったわけではない。
それを誰も注意しなかったわけではない。
リリィが聞く耳を持たなかっただけである。
「アルバート!」
それを止めるのはブラッドだけだった。
アルバートの後ろに隠されるようにされたことも不服であったが、それ以上にリリィに対する処罰が不満だった。
「やりすぎだ。こんな子どもにするようなことじゃないだろ!」
ブラッドの言葉に対し、この場にいた執事とメイドたちは心の中で同意していた。
「はぁ」
アルバートはため息を零した。
それから、アルバートの背中に隠れているなど性に合わないと言わんばかりに隣に並んだブラッドの頭を強引に撫でる。
「なにをするんだ!」
そんなことをしている場合ではないだろうと、ブラッドは抗議の声をあげる。
「子どもに甘いのは最大の欠点だ」
「はぁ!? こんな子どもに大人と同じ判断をさせようとするのが間違いだろ!」
ブラッドはありえないと反撃の言葉を口にした。
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