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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

04-1.悪役令息は妥協しない

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 ……また、気絶したのか。

 セックスの余韻を楽しむこともなく、ピロートークに花を咲かせることもなく、ブラッドは気絶をするように眠りついたようだ。

 失神したまま、目が覚めることもなく、そのまま眠ったのだろう。

 仕事の疲れは取れているものの、尋常ではない腰の痛みに襲われた。

 ……アルバートはいねえし。

 体力の差を実感する。

 同じ第二騎士団に所属をしているとはいえ、団長を務めるアルバートはその性格からか、先陣を切って戦うことが多い。

 本来ならば、アルバートは後方で定格な指示を出すべき立場だということをまったく理解をしていない為、指示を出す役目は副団長であるブラッドの役目となっている。

 その影響もあるのだろうか。

 アルバートの体力は底知れない。疲れ切って眠っている姿など、ブラッドは一度も見たことがなかった。

 ……だからって、普通は起こしていくだろ。

 本日、ブラッドは休暇を与えられている。

 仕事は机の上に山のようになっていることだろう。

 昨日、ある程度の書類仕事は済ませたとはいえ、急を要する書類を最優先していた。期限の余裕があった書類は後回しにしてきた覚えがある。

 そうでもしなければ、期限切れの書類で第二騎士団の執務室は溢れ返っていたことだろう。

「変態バカアルバート」

 小声で悪態を吐く。

 ……俺の立場を少しは考えろよ。

 本人の同意もなく結婚をさせられたのは周知の事実だ。簀巻きにされてスターチス侯爵家に運び込まれた姿は、使用人たちにも目撃されているはずである。

 その後、まともな挨拶をすることもできなかった。

 スターチス侯爵領で主に生活をしている侯爵夫妻は、ブラッドの両親と交渉をした結果、ブラッドのことを受け入れただろうが、王都滞在用に建てられている別邸で働いている使用人たちがどのように捉えているのか、わからない。

 アルバートが寝室を離れた隙に聞き耳を立てられても、おかしくはない。

 ここにはブラッドの味方は、アルバートしかいない。

 見慣れたカザニア伯爵家の使用人たちは誰もいない。
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