悪役令息は犬猿の仲の騎士団長に溺愛される。

佐倉海斗

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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

03-15.※

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 ……おかしくなりそうだ。

 四回も絶頂に達した影響だろうか。

 ブラッドの頭はぼんやりとしたままだった。

 涙が溜まり、視界がぼやける。悲しいわけでも辛いわけでもない。生理的な涙が頬を撫でるように落ちていく。

「アルバート」

 ブラッドはアルバートの名前を呼ぶ。

 普段は口喧嘩ばかりをしているとは思えないほどに甘い声だ。

 早く続きをしてほしいと言わんばかりの声で名を呼ばれ、アルバートは引くわけにはいかなかった。

「……手加減はできないからな」

 アルバートは忠告はしたと言わんばかりの言葉を口にしながら、自身のズボンに手をかける。迷うことなく下着を脱ぎ捨て、既に限界だと訴えるかのように反り返っていたアルバートの陰茎の先端をブラッドの尻に当てる。

 念入りに解してある為、挿入するのにはそれほどの苦労はないだろう。

 しかし、アルバートはブラッドに視線を向けたまま、動くのを止める。

 ……童貞野郎が。

 ブラッドは心の中で毒を吐く。

 そのまま、挿入すればいいのにもかかわらず、まだ迷っているのだろうか。

「ヘタレ」

 ブラッドは挑発するかのように笑った。

「煽ってやられねえと入れることもできねえわけ?」

 受け入れる側とは思えない強気な発言だった。

 ブラッドはアルバートの背中に回していた腕に力を込める。体勢を変えるほどの力は入らないものの、ブラッドを煽るのには十分だろう。

「いや、そういうわけではないが」

 アルバートの煮え切らない言葉を聞き、ブラッドは眉を顰める。

 ……めんどくさい。

 仲が良いとはお世辞にもいえないものの、付き合いだけは長い。

 アルバートの真面目な性格は誰よりも知っていると言っても、過言ではないだろう。

 アルバートは、妙なところで真面目な考えに囚われる癖のある。

 今回もそうなのだろう。

「避妊しないといけないだろう」

 アルバートの言葉を聞き、ブラッドは盛大なため息を零した。

 萎えることはなかったものの、場違いにも限度というものがある。
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