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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている
03-6.※
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馬車が止まった。
アルバートはそれに気づいたのだろう。名残惜しそうに唇を離した。
「アルバート?」
どうして離れて行ってしまうのだと責めるかのように、ブラッドはアルバートの名を口にする。
赤く染まった頬は欲情を煽り、蕩けた目をアルバートに向ける。
普段の口の悪い横暴な態度とは大違いだ。
日頃の悪評とは程遠い顔をするブラッドからアルバートは目が離せない。
「……そういう顔はよくない」
咎めるようなことを口にしつつ、目が離せない。
求められるがまま、深い口付けをしそうになるのを耐えつつ、アルバートはブラッドの頬に触れた。
「続きは部屋でしよう」
「今がいい」
「ダメだ。少しの間だけだ。我慢できるだろう?」
いつまでも馬車の中に閉じこもっているわけにはいかない。
馬車の中から降りようとしなければ、心配をした御者に扉を開けられることになるだろう。
出迎えている使用人たちも体調不良かと覗き込む可能性も否定できない。
アルバートが様々な事態を想定し、淡々とした口調で語りかけたとしてもブラッドは気にも留めないだろう。
「……優しくしてくれるか?」
ブラッドは何を思ったのか、首を傾げながら問いかける。
「もちろんだ」
それに対し、アルバートは即答した。
溺れるようなキスをした直後だ。ブラッドがなにかを企んでいるとは考えもしなかったのだろう。
「さあ、降りようか」
そろそろ、御者が扉を開けるだろう。
アルバートはブラッドの頬に触れていた手を動かし、当然のようにブラッドの手を握った。振りほどかれることはなかった。
* * *
寝室についた途端、アルバートはブラッドを押し倒した。
抵抗することもなく、ブラッドは素直に押し倒されたままだ。
煽るような言葉の一つも口にすることはなかったが、蕩けるような眼をアルバートに向けていた。
アルバートはそれに気づいたのだろう。名残惜しそうに唇を離した。
「アルバート?」
どうして離れて行ってしまうのだと責めるかのように、ブラッドはアルバートの名を口にする。
赤く染まった頬は欲情を煽り、蕩けた目をアルバートに向ける。
普段の口の悪い横暴な態度とは大違いだ。
日頃の悪評とは程遠い顔をするブラッドからアルバートは目が離せない。
「……そういう顔はよくない」
咎めるようなことを口にしつつ、目が離せない。
求められるがまま、深い口付けをしそうになるのを耐えつつ、アルバートはブラッドの頬に触れた。
「続きは部屋でしよう」
「今がいい」
「ダメだ。少しの間だけだ。我慢できるだろう?」
いつまでも馬車の中に閉じこもっているわけにはいかない。
馬車の中から降りようとしなければ、心配をした御者に扉を開けられることになるだろう。
出迎えている使用人たちも体調不良かと覗き込む可能性も否定できない。
アルバートが様々な事態を想定し、淡々とした口調で語りかけたとしてもブラッドは気にも留めないだろう。
「……優しくしてくれるか?」
ブラッドは何を思ったのか、首を傾げながら問いかける。
「もちろんだ」
それに対し、アルバートは即答した。
溺れるようなキスをした直後だ。ブラッドがなにかを企んでいるとは考えもしなかったのだろう。
「さあ、降りようか」
そろそろ、御者が扉を開けるだろう。
アルバートはブラッドの頬に触れていた手を動かし、当然のようにブラッドの手を握った。振りほどかれることはなかった。
* * *
寝室についた途端、アルバートはブラッドを押し倒した。
抵抗することもなく、ブラッドは素直に押し倒されたままだ。
煽るような言葉の一つも口にすることはなかったが、蕩けるような眼をアルバートに向けていた。
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