悪役令息は犬猿の仲の騎士団長に溺愛される。

佐倉海斗

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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

03-5.

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 それでも、アルバートのことを嫌いになれるわけがなかった。

 ……嫉妬なんてされても面倒なだけだと思っていたのにな。

 馬車の中で身体を寄せ合う。

 身体を鍛えている二人が座っても余裕がある馬車なのに、狭く感じてしまう。

 触れている肌が熱を持つ。

 服越しに伝わる体温がいつもよりも伝わりやすいのは、互いに向けられた好意によるものだろうか。

 ……妬いてほしいというわけだ。

 社交界で何度も耳にしたことを思い出す。

 なぜ、嫉妬心を煽るような振る舞いをするのか、不思議で仕方がなかった。

 女心に振り回され、煽られているとは知らないまま、嫉妬を隠せない男性の姿が情けないものにしか見えなかった。

 かつての自分自身が笑っていることだろう。

 無様な姿だと笑いものにされていることだろう。

 それすらも、愛の姿なのだと今ならば言える。

「ブラッドの心の広さに呆れるな」

「なんでだよ。そこは褒め称えるところだろ?」

「褒めたくないところの間違いだろう」

 顔を寄せられる。

 迷いが断ち切れたわけではないだろう。

 嫉妬心が薄れたわけではない。

 それでも、アルバートの中では納得することができたのだろう。

「愛している」

 アルバートは愛の言葉を囁くと、そのまま、唇を合わせた。

 当然のように僅かに隙間を作られたブラッドの口の中に舌を潜り込ませ、絡ませあう。

 互いを求めずにはいられなかったかのように、欲求のまま、動かしていく。

 ……やばい。

 頭の中が真っ白になりそうなところを踏みとどまる。

 酸素が行き届かないほどに激しく舌が絡み合う。互いの唇から、どちらのものなのか、わからない唾液が零れ落ちても拭う余裕すらもない。

 僅かに唇が離れるたびに吐息が零れ、言葉を交わす間もなく塞がれる。

 何度も角度を変えて繰り返される。

 それを抵抗することもなく受け入れ、与えられる快感に溺れていく。

 ……気持ちいい。

 このまま溺れてしまいたいとさえも思ってしまう。
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