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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

03-4.

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 ……わかっているくせに。

 昼間の機嫌の悪さが直っていない。

 仕事に復帰したと知られてしまえば、幼馴染のギルベルトがちょっかいをかけに来るのは想定内だっただろう。

 自分の主張がすべて叶うと信じて疑わないウォルトが執務室に押し掛けてきたのは、ブラッドにとっては想定外の話ではあったが、アルバートは薄々感づいていたはずだ。

「なあ。アルバート。お前、嫉妬してるんだろ」

 ベッドの中では組み敷かれる側でも、普段から受け身でいるわけではない。

「俺の悪評くらい耳にしてただろ」

 ブラッドの評判はお世辞でもいいとはいえないものばかりだ。

 第二王子であるウォルトに婚約破棄を告げられたキャロラインを庇ったことにより、悪役令息だと世間で悪評が流されているのは、日頃の悪評があってこその噂なのだろう。

 騎士団に所属をしているとは思えないほどの悪評はアルバートも耳にしたことがあるはずだ。実際、アルバートはブラッドに対し、行いを改めるように再三注意をしていた。

「……あぁ。知っている」

 アルバートはその噂を思い出していたのだろうか。

 少しだけ不快そうに悪評を認めた。

「アルバートは怖がりだな」

 ブラッドは大げさに笑って見せた。

「嫉妬して俺を閉じ込めそうな自分が怖いんだろ。それをして俺に嫌われるのがなによりも怖いんだ」

 ……バカだな。

 図星だったのだろう。

 何も言い返さないアルバートに対し、ブラッドは遠慮をしなかった。

「そんなことで嫌うわけねえだろ」

 逃がすわけがないのだというかのようにアルバートに抱き着く。

「自信持てよ。この俺が抱かれてやってるんだから」

「いいのか」

「当然だろ。嫌なことをされたら遠慮なく大暴れしてやるよ」

 ……だって、閉じ込めたいほどに俺のことが好きなんだろ?

 監禁されたい願望があるわけではない。

 万が一、監禁されるような事態に陥れば、大暴れをするだろう。

 全力で抵抗をするだろう。
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