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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

03-2.

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「……キスの一つくらいしろよ」

 一度、認めてしまうと気が楽だった。

 強請るように真似をしていると自覚しつつ、止められない。

 早く触れられたいと体が疼く。

 腹の奥底から疼いている。

 その欲求に素直になるだけのブラッドに対し、アルバートは僅かに口角をあげた。

 まるで、そうなることがわかっていたかのような顔だった。

「キスだけでいいのか?」

 アルバートはブラッドの額に触れるだけの口付けをする。

 一瞬、唇が押し付けられただけですぐに離れてしまう。

「そこじゃない」

 ブラッドはわかっているのだろうと言わんばかりの表情を浮かべ、アルバートを見つめる。

「意地悪をするなよ。アルバートだって我慢してるだろ?」

「我慢しているわけじゃない」

「嘘つき。俺の腰を撫でまわしながら言うセリフじゃねえんだよ」

 ブラッドは煽るように距離を詰める。

 その間もアルバートの手は労わるかのように腰を撫ぜる。

「我慢はよくないぜ? 素直になれよ。元童貞君」

 その言葉に思い当たることがあったのか。

 アルバートの手は止まった。

 しかし、腰に当てられたまま、離れてはいかない。

「確かに。昨日、ブラッドとするまではしたことがないのには間違いない」

 アルバートの言葉に対し、ブラッドは当然だと言わんばかりの顔をする。

「だが、それは関係ないだろう」

 それに対し、ブラッドは首を左右に振った。

「我慢するのは童貞の名残だろ? 昨日までは我慢してたんだ。その名残で今も俺に手を出すのを我慢してる。正解だろ?」

 当然のように主張する。

 そこまで言われて我慢をするわけがないだろうと言わんばかりのブラッドに対し、アルバートは揺らがなかった。

「そうやって俺以外にも言ってきたのか?」

「言ってねえけど」

 即答しつつ、ブラッドはアルバートの機嫌が直らない理由を理解した。

 浮気を疑っているわけではない。ただ、嫉妬しているだけだ。
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