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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

02-14.

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「彼奴の言ったことを信じているわけではない」

 アルバートはゆっくりと指を動かす。

 焦らすように触れられるだけでは達することは出来ないだろう。

「俺はブラッドを信じているからな」

 その言葉を聞き、ブラッドは何度も大げさに頷いて見せた。

 ……どうしよう。

 アルバートの話が頭の中に入ってこない。

 ……足りない。

 昨夜、意識が飛ぶほどに与えられた快感が抜けていないのか。

 それとも、快感が与えられることが癖になってしまったのか。

 ズボンの上をゆっくりと撫ぜるだけでの指に意識を持っていかれそうになる。

「ブラッド」

 名を呼ばれるだけで気持ちが高まってしまう。

 ブラッドの頬は赤く染まり、息が乱れていく。

「仕事に影響のあることはしないんだろ?」

 それは部下の前で言い放ったブラッドの言葉だった。

 アルバートはわざとらしく手をブラッドのズボンから離す。

「続きは家に帰ってからだ」

「……はぁ?」

「そんな顔をしてもダメだ。公私混同はしないのだろう?」

 アルバートは身に付けている懐中時計を取り出し、時間を見せつける。

 休憩時間は残り十分。

 仕事に戻らなくてはいけない時間を見せつけられたブラッドは眉を潜める。

「この状態で放置ってバカじゃねえの」

 思わず、舌打ちをしてしまった。

 ……屑野郎。

 与えられた快感により元気になりつつある部分を意識してしまう。

 ……シャワーでも浴びてくるか。

 頭を冷やせば、少しは冷静になるだろうか。

 そんなことを考えながらもブラッドはアルバートを睨みつける。

「覚えてろよ。バカ」

 ブラッドはゆっくりとソファーから降りた。

 ……腹立つ顔をしてやがって。

 アルバートは引き留めない。

 それどころか、ブラッドの考えをわかっているかのような視線をブラッドに向けていた。
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