悪役令息は犬猿の仲の騎士団長に溺愛される。

佐倉海斗

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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

02-11.

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「あ、さすがに昼間からしない?」

 ギルベルトはアルバートの視線に気づいていないのか。

 それとも、アルバートのことに興味がないのか。

「いいよなぁ。アルバート。俺も一回で良いからブラッドとヤりたかったんだけど、こいつ、絶対に上じゃないと嫌だって譲ってくれなくてさ」

「社交界での冗談の話だろ。信じるからやめてくれ」

「冗談? 俺は本気で誘ってたのに」

 ギルベルトはゆっくりと立ち上がる。

 それから視線を時計に向けて、心の底から残念そうな顔を浮かべた。

「休憩終わりそうだから、俺、戻るわ。またな! ブラッド!」

「言い逃げをするつもりか!! 釈明してからいけ!!」

 ブラッドの手がギルベルトを掴むよりも早く、ギルベルトは逃走した。

 他人の目を気にしない速さで扉付近まで走り抜け、それから、わざとらしくゆっくりと振り返った。

「札掛けといてやるからごゆっくり!」

 それだけ言い残して、素早く、ギルベルトは休憩室から出ていった。

 閉められた扉からは鍵をかけられた音がする。

「あの野郎」

 ブラッドはギルベルトを追いかけようと、立ち上がろうとしたものの、動けない。

「離せ」

 ブラッドの腰に回されていたアルバートの手が離れない。

 それどころから、ブラッドを逃がさないと言わんばかりの視線が注がれていた。

 ……嫌な予感がする。

 それは昨夜、散々注がれた視線とよく似ている。

 嫉妬と独占欲が混ざったような重苦しい視線だ。

「アルバート? ちっ、近すぎないか?」

 身の危険を感じ、声をかけるものの、意味がなかった。

「ブラッド」

 愛おしそうな声だった。

 狂おしそうな声だった。

 様々な感情が入り混じったかのような声で名を呼ばれると、ブラッドは抵抗ができない。

 その声に弱いのを知っているかのようにアルバートは表情を緩めた。

 唇が重なり合う。当然のように口内に侵入した舌がブラッドを翻弄する。
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