悪役令息は犬猿の仲の騎士団長に溺愛される。

佐倉海斗

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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

02-10.

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「ブラッド?」

 困惑したような声を上げるアルバートに対し、気に入らないと言わんばかりの顔をしたブラッドは迷うことなくアルバートの両頬を手で掴んだ。

「間抜けな顔をしてんじゃねえよ」

「……悪い」

「謝るな。調子が狂うだろ」

 ブラッドはゆっくりと距離を取る。

 それから両頬を掴んでいた手を離した。

「幼馴染の大親友のことは無視で、旦那の相手かよ。侯爵家のお嫁様は素っ気ないなぁ」

 ギルベルトはつまらないと言いたげな顔をしながら、挑発するような言葉を口にするものの、アルバートの反応は冷めた視線だけだった。

「当然だろ」

 ブラッドは見下すかのように笑ってみせた。

「つまんなーい」

「うるさい。喚くな。さっさと行け」

「えー? どうせなら大親友が大男相手に攻めまくってるところを見てから仕事に戻りたいんだけど」

 ギルベルトの言葉は冗談ではなかった。

 ギルベルトは他人の情事を見て楽しむ趣味がある。

 しかも、それを隠すこともせず、堂々と口にする悪い癖があった。

 ……それ目当てか。

 ブラッドはギルベルトの言葉には慣れていた。

 しかし、ブラッドの隣に座り、さりげなくブラッドの腰に手を回しているアルバートは違う。

 露骨に引いたような顔をしていた。

 それに気づいたブラッドは気まずそうに視線を逸らした。

 ……昨日まで童貞だったしな。

 散々、アルバートのことをからかってはいたものの、ブラッドも経験があったわけではない。伯爵家の息子として、年相応の最低限の嗜みとして童貞と思われないような言葉文句や仕草を身に付けているだけである。

「そういうのは他人に見せるもんじゃねえんだよ」

 ブラッドは見栄をはっていただけだ。

 実際に性行為をしたのは昨日が初めてだった。

「な? そうだろ?」

 アルバートに同意を得ようとしたものの、暗い表情のままだ。
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