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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

02-9.

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「いやー。驚いたなー」

「なにが」

「まさかブラッドが結婚するなんて! しかも、相手がアルバート! なにがあったのか聞こうと思ったのに寝てるんだもんなー」

 ギルベルトはいつも通りの口調で話しつつ、ブラッドの頬を突くのを止めない。それをアルバートが嫌そうな顔をしていることに気付いているだろう。

 ……いつまで触らせてるんだよ。

 ブラッドの頬を突いている手は止まらない。

 痛くはないものの、心地が良いものでもない。

「知らないかもしれねえーけど」

 ギルベルトは世間話を口にするかのように言葉を続ける。

「今回の騒動。第二王子だけじゃねえから」

「……知っている」

「だと思った。で? 騒動に乗じて嫁に貰ってくれたアルバート君はどうするつもりなんだよ」

 ギルベルトはブラッドの頬から指を離した。

 ……騒動か。

 両親は侯爵家のお陰ですべてが丸く収まると口にしていたものの、そう簡単には事は進まないだろう。一時的な対処策に過ぎない。

 ……キャロラインは無事だろうか。

 一方的な婚約破棄を告げられたキャロラインは、伯爵領の片隅にある修道院に預けられている。

 今回の騒動が収まれば伯爵邸に戻されることになっていたものの、それを指示していたブラッドが伯爵家から離れた今となってはどうなることか、わからない。

「伯爵家のお家騒動まで抱え込んでくれるわけ?」

 ギルベルトの言葉に対し、アルバートは何も言わなかった。

 ……もういい。

 ブラッドは寝たふりを止めた。

 ……もう充分だ。

 鉛のように重たい上半身を起こし、寝たふりをしていると見抜いていたのか、まったく驚いたそぶりを見せないギルベルトを睨みつける。

「おっはよー。野郎の固い膝枕で良い夢でも見れたか?」

 ギルベルトの穏やかな笑顔を見たブラッドは舌打ちをする。

 それから、心配そうな顔をするアルバートに対し、勢いよく衝突するのではないかと思わせるほどに顔を近づけた。
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